1日3800キロカロリーを賢く摂る「メジャー流」戦略
── 現在は、食事をどのように管理されているのですか。
大前さん:奥様や現地の調理担当の方に、食材や調理法の具体的な内容を共有しています。1日3800キロカロリー前後を確実に摂取できるよう、ルールを徹底してもらっています。
── 3800キロカロリーは厚生労働者が示す「日本人の食事摂取基準(2025年)」における一般男性の基準(約2300キロカロリー)を大きく超える、驚異的な数字です。
大前さん:あの体格で戦い続けるには必要です。ただ、彼は一度にたくさん食べるタイプではないので、間食をうまく挟みながら「賢く摂る」方法で、体重を維持する努力をしています。
── 結果が出ず、心が折れそうな時期のサポートはどうされているのでしょう。
大前さん:調子がいいときは2週に1度の連絡程度ですが、苦しそうなときは連絡を取るようにします。鈴木選手は調子を落とすと食欲も落ちてしまうことが多い。調理担当の方から「食欲がないようです」と連絡があれば、すぐにヒアリングをして、「今、何なら食べられそうか」を確認し、調理担当の方と相談することもあります。
時には雑談のなかでエージェント選びの相談に乗ったことも。食事のときにたくさん話すことで考えを整理するなど、少しでも何か役に立てたらと思います。
── 最後に、私たちが日常の食事を見直す際のアドバイスをいただけますか。
大前さん:まずは「やせたい」「健康になりたい」といったことが何につながるのか目的を明確にすること。「やせたい」だけだと数字に追われてしまいますが、やせてこれまでできなかったファッションにトライしたらライフスタイルが変わる、といった感じです。そして一度に変えようとせず、「朝食だけは変えてみる」といった、今の食生活にムリなくなじむ部分から手をつけるのがコツです。大げさなことではなく、毎日の積み重ねが、自分を支える土台になっていくのだと思います。
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異国の地で、文字通り命を削るようにして戦い続ける鈴木誠也選手。 そのかたわらには、孤独な遠征の夜も、不振に揺れる心も、一膳の「炊き込みご飯」や連絡をとって支え続けた大前恵さんの姿がありました。
私たちが日々口にするもの、そして誰かと交わす言葉。 それは、いつしか自分という人間を形作り、逆境に立つ時の「土台」になっていく。
「自分を大切にする」とは、特別な何かをすることではなく、今日食べるものや、隣にいる人との時間を、ほんの少しだけ丁寧に選ぶことなのかもしれません。
取材・文:西尾英子 写真:大前恵