「夢を叶えたのではない、諦めた」40代で選んだ「今の正解」

── 向いてないと感じながらも、仕事を続ける理由は何ですか。

 

ハジメさん:お笑い1本で食えてたなら理想だったかもしれないですが、そうじゃない人はたくさんいる。僕もそのひとりで、違う道を模索しなきゃいけません。10代で「芸人になってテレビに出たい」という夢までは描けていましたが、その先を考えていなかった。

 

世の中に「売れる」って言葉がありますよね。でも売れるのと出続けるのはまったく違う。難しいのは、ずっと残り続けるほうなんですね。そこまでイメージしておかなきゃならなかったんです。だから僕は「夢を叶えた」というよりも「夢を諦めた」んだと思います。でも、もしずっと売れて続けていたら家族ができていたかはわからないとも思うので、難しいですね。

 

── 2014年に結婚し、6年もの不妊治療期間を経てお子さんを授かりました。奥さんは今の仕事をどう思っていますか。

 

ハジメさん:奥さんはどちらかというと芸人の仕事をしてほしいんですよね。でも現実はそう甘くはない。芸人の収入がゼロで、ただ家にいるだけというのはしたくなかった。僕はやっぱり、家族を守りたかったんです。

 

── 40歳を過ぎて、家族がいて。もう一度芸人の世界に飛び込めますか?

 

ハジメさん:芸人って、夢とか希望、憧れだけでは無理な世界で、コスパはめちゃくちゃ悪いですよ。でも10代、20代なら飛び込めた。40歳を過ぎて、家族がいて。もう一度できますとかといわれたら、妻と娘の人生を賭けてまで、もうこの世界には「ようとび込めないですわ」(笑)。

 

今の自分はカッコいいとも思わないですね。でも、家族を犠牲にしてまでやろうと思える仕事は、極論、もうないと思っています。

 

 

「夢を叶えたのではなく、諦めた」という言葉に、40歳を過ぎて家族を守る道を選んだハジメさんの強い覚悟を感じます。 みなさんは人生の転機で、自分の「やりたいこと」と「守るべきもの」がぶつかったとき、どのような決断をしましたか? 理想と現実の狭間で葛藤しながらも、形を変えて前へ進もうとする彼の生き様に重なる部分は、あなたの人生にもありますか?

 

取材・文:内橋明日香 写真:ハジメ