小さいころから大好きだったパパ

岸田浩二 岸田ひろ実 岸田奈美 岸田良太
夫の浩二さん、ひろ実さん、奈美さん、良太さん

── そのとき、お子さんたちはおいくつだったのですか。

 

岸田さん:奈美が中学2年生、良太は小学4年生でした。良太は、何が起こっているのかわかっていませんでした。

 

奈美は、見た目も性格もパパにそっくりで、小さいころからパパのことが大好きだったんです。東京にもよくひとりで遊びに行って、パパにいろいろなところへ連れて行ってもらっていました。

 

「人として何を大事にするか」「なんのために勉強するのか」「仕事とは何か」というような話を、夫は奈美が小学生のころからよく話していました。奈美が学校で友達ができなくて悩んでいたとき、「奈美ちゃんの友達はこの箱のなかにいる」と言ってインターネットの掲示板を教えたのも夫です。

 

ただ、ふたりは似ているだけに反発することも多くて、奈美が思春期になるとよくケンカをしていました。勉強をしないとか携帯電話を使いすぎるとか、パパに叱られることも増えて、奈美にしてみたら憧れのパパにほめてもらいたいのにほめてもらえなくて、歯がゆい思いをしていたのだと思います。

 

夫が倒れた日も、ささいなことで言い合いになって、奈美は「パパなんて大嫌い。死んじゃえ」と言って部屋に閉じこもってしまいました。ケンカをしても、いつも朝になるとふたりはケロっとしてぺちゃくちゃしゃべっているので、その日もそうなるわ、と思っていたんです。まさかそれが、最後の会話になるとは思いませんでした。

 

病院に駆けつけた奈美は、泣きながら「ありがとう」「ごめんなさい」と言っていました。今でも自分を責めていると思います。あの夜、私が奈美を起こしていれば、と後悔してもしきれません。