人生で今がいちばん相撲を見ている

獅司
ウクライナ出身の獅司関。2024年11月場所で新入幕を果たし、その後、定着している

── 相撲部屋のおかみの仕事は多岐にわたると思いますが具体的にどういった業務をしているのでしょうか。

 

垣添さん:スケジュールや金銭の管理などの運営、いただき物へのお礼状の執筆や送付、番付発表の際の後援者の方への郵送やグッズ発送など事務仕事全般をはじめ、部屋にいる力士の母親役も担っています。お客さまが稽古見学に来たときの対応もそうですね。親方が巡業などで不在時に私がかわりに稽古を見ることもあります。

 

親方が部屋付きのころから礼状を書いたりはしていましたが、慣れるまで時間はかかりましたね。後援会の方々への番付表の送付の際は、住所録を打ち込んで宛名シールを封筒に貼ったり、千秋楽の打ち上げ会のご案内と更新月の前にはお知らせを入れたりするんですが、それらをすべて手作業でやっているんです。だいたい800通程度。本来であれば関取なので雑務をする必要はないのですが、雷部屋に所属するウクライナ出身の力士・獅司は積極的に手伝ってくれて助かっていますね。

 

── 取り組みについてアドバイスを送ったりすることもあるのでしょうか?

 

垣添さん:本場所中はリアルタイムに取り組みを見ています。相撲の内容があまりよくなかったときや怪我をしたときなどは「どうした?」とすぐにLINEを送ることもあります。たとえばそこで「自分の得意な形になれなかった」と返信があったら、「出来なかったじゃないでしょ」「自分から行かないと」と喝を入れることもありますね。

 

これまでの人生で今がいちばん相撲を見ているかもしれません。獅司の取り組みのときは自分が相撲を取っているかのように相手の得意技や出足などを見て技を考えるくらい夢中になっていますね。弟子ができなかったことができるようになったり、教えたことができるようになった姿を見るとうれしいですね。今まではそんな気持ちはなかったのに(笑)。

 

── おかみさんになって、心境の変化が産まれたのですね。最後に今、相撲は好きですか。

 

垣添さん:私は終始「相撲は別に好きではない」と思ってきました。でも改めて考えてみると、嫌いじゃなかったんだなって思うんです。1日1日を積み重ねていく弟子たちの姿に、相撲をしていたころに自分もああしておけばよかった、こうしておけば無敵だったかもしれないなと思うこともあります。だからこそ、今度は後悔しないように、おかみさんとして今後も取り組んでいくつもりです。

 

取材・文:石井宏美 写真:垣添栄美