「母の姿を見て、大学卒業後は専業主婦になるつもりだったんです。だから、おかみさんの話があったときも、最初は『絶対にやらない。誰か探してきて』と」。そう笑って話すのは、かつて土俵で日本一に輝いた「元相撲女王」であり、現在は雷(いかづち)部屋を切り盛りするおかみの垣添栄美さん。運命に導かれるように雷親方(元小結・垣添)と結婚し、今では部屋を支える「もう一人の師匠」として、親方とともに奮闘を続けています。

小5で相撲を始めるも「続けるつもりはなかった」

垣添栄美
学生時代は全日本新相撲選手権で3度の優勝を飾った元相撲女王の垣添さん

── 垣添さんは学生時代に全日本新相撲(現女子相撲)選手権で計3度の優勝を飾るなど、女子相撲の重量級で活躍されました。そもそもなぜ相撲を始めようと思われたのですか。

 

垣添さん:相撲との出会いは小学5年生のときでした。ただ、当時はまだ本格的に競
技として相撲をしていたわけではありません。2つ年下の弟と、がんで余命3か月と宣告された祖父を元気づけようと、わんぱく相撲の名古屋大会に出場したんですが、そこで弟姉で優勝して。その後、中学3年生で全日本新相撲3位、高校では1度、本格的に競技を始めた大学で2度の日本一になって、国際大会でも高校のときに1度3位入賞を果たしました。

 

ただ、試合には出ていましたけど、稽古はほとんどしていなかったですし、相撲を続けるつもりはまったくありませんでした。周りの方々が熱心に声をかけてくださって渋々出ていたという感じで。

 

中学、高校は愛知県の椙山女学園という一貫校だったので、大学にもそのまま進学する予定でした。でもいつの間にか相撲好きの母と(大学の)監督の間で進路の話がついていて、日本大学に進学することになっていたんです。

 

── ご自身は具体的にどんな進路をイメージされていたのでしょうか。

 

垣添さん:当時、空間やデザインすることが好きだったので専門的に学びたいと考えていました。でも高校時代まで私が全国大会で結果を残していたこともあって、相撲部の監督が大学以降も相撲を続けさせたいと考えていたんです。大学の相撲部が初めて女子部員を入部させるということになり「相撲を取った後にもできるだろう」「4年間、私に時間をくれ」と説得されて。「無理です」「行きません」と抵抗し続けていたんですが、最終的には根負けして日大に進学して相撲部に入ることになりました。