ファンの矜持を目の当たりにし、心に火がつく

── そして2017年には、佐藤さんの単独公演を初めて観るために地元・広島から東京に行かれました。推しを間近に感じた感想はいかがでしたか。

 

徳丸さん:運よく最前列のチケットだったのですが、彼が通路の横を通るときに、間近で汗が伝うのが見えて…その様子が本当に神秘的で美しくて、感動しました。同時に、ものすごく恥ずかしくなってしまったんです。

 

── 最高にうれしいはずの場面なのに、恥ずかしくなった、というのはなぜですか?

 

徳丸さん:「あ、彼の視界に入っちゃった」という申し訳ないような気持ちです。周りのお客さんたちを見たら、家の動画で見たのと同じように、すごくかわいくてきれいな人が多かったんです。朝から美容院に行って、編み込みをした髪の毛の中にリボンがくるくる挟まっているような、すごくおしゃれなヘアスタイルをしているとか、雰囲気もキラキラした人たちがたくさんいて。「推しの視界に入るものはきれいであってほしい」というファンの矜持のようなものを改めて目の当たりにしたんです。

 

それに比べて私は、せいぜい職場で足踏み運動をして運動した気になっていた程度。この日のために、何ひとつ努力をしてこなかったと、いたたまれない気持ちになりました。「こんな姿で彼の視界に入っちゃって、ごめんなさい」って。

 

── 「推しの視界に入るものは、少しでもきれいなものであってほしい」。そんなファンならではの思いが、徳丸さんの心に火をつけたんですね。

 

徳丸さん:帰りの夜行バスの中で、「絶対に帰ったらダイエットをして痩せて、みんなみたいにかわいくなりたい。次こそ今より自信を持って会いに行くんだ」と心に誓いました。それまで何度も挫折してきた私でしたが、このときばかりは「推しに恥ずかしくない自分になりたい」その一心でした。

 

その後、エアロバイクを中心とした運動と食事の工夫で、約1年半かけて41キロの減量に成功しました。しばらくして再び推しの舞台を観に行ったときに、個別のイベントで「あなたのファンになって40キロ痩せました。あなたのおかげで人生が変わりました。私の人生を変えてくれてありがとう」と、ようやく感謝の気持ちを伝えることができました。

 

ずっと体重計から逃げて、現実から目を背けてきました 。でも流司くんを知って、初めて「変わりたい」と思えたんです。41キロ痩せたこと以上に、挫折ばかりだった弱い自分と向き合えたことが、私にとってはいちばんの収穫でした。自分を卑下するのをやめて、ちゃんと認められるようになった 。そのきっかけをくれた彼には、感謝しかありません。

 

取材・文:西尾英子 写真:徳丸奈瑠美