「同じ目線に立ってはいけない。自分はトップに立つ人間だと思えば、いじめてくる人なんてとるにたらない存在よ」。いじめに震える娘へ、母が贈った苛烈なまでのエール。その言葉を支えに学生時代を過ごした榎田あいさん(35)は、30代で眠活ヘッド整体「Dr.HEAD」を立ち上げ、3度の倒産危機を乗り越え、現在は7店舗の経営をするオーナーに。絶望を「成功の原点」に変えた女性の半生を追いました。
不眠の経験からヘッドマッサージにハマって
── 榎田さんは2021年、快眠へつながる頭皮マッサージを行う眠活ヘッド整体「Dr.HEAD」をオープンさせたそうですね。お店を立ち上げようと考えるまで、整体師としての経験はなかったと伺いました。どんな経緯でヘッド整体に関わるようになったのでしょうか?
榎田さん:以前、会社員として働いていたとき、激務で2~3時間くらいしか眠れなかった時期があります。すると、眠りたくても眠れない不眠症になってしまったんです。ストレスから20キロも太ってしまったし、自律神経もおかしくなって…。つらい毎日を送っていたときに、知人に紹介されたヘッドマッサージを受けました。すると、リラックスできたおかげか、少しずつ眠れるようになってきて。自然と体重が戻り、体調もだんだんよくなっていきました。その経験のおかげで、眠ることの大切さを実感したんです。
だんだんほかの人にもぐっすり眠れるようになってほしい、健康な生活を送ってほしいと思うようになりました。もともと「いつか起業したい」と考えていたから、ヘッドマッサージの会社を立ち上げたいと考えるようになったんです。
とはいえ、迷いもありました。いつか独立したいとずっと思っていたのですが、私にはマッサージの知識もなければ、整体師としての資格もない。自分にできるのか悩みました。すると起業セミナーで知り合い、独立するための心構えなどを教えてくれていた師匠的な存在の人がアドバイスしてくれたんです。

── どんなアドバイスだったのでしょうか?
榎田さん:「準備を万全にしてから始める、と思っていると絶対にずっとやらない。まずは行動してみて、走りながら問題を解決していったほうがいい」と言われて。それで決意が固まりました。私の不眠症を改善してくれたマッサージをしてくれた人に技術を教えてもらい、「技術提供という形で協力してほしい」とお願いしたんです。
その方に快諾していただいた後は、とんとん拍子に進みました。ちょうどコロナ禍だったため、空き物件が多く、条件に合った物件はすぐに見つかりました。しかも、当時は仕事を切られてしまった整体師さんがたくさんいて。整体師さんを募集したところ、すぐにいい方たちが応募してくれました。場所もスタッフも、申し分のない形でスタートできました。
── 榎田さんのお店ならではのこだわりなどはありますか?
榎田さん:お客さまに「セルフケア」してもらうことです。簡単にできるマッサージ方法をお伝えし、「宿題」としてご自宅で実践していただくことをお願いしています。
お客さまは、たいてい月に1回ほどの頻度で来店されます。ただ、このペースの施術だと、ふだんの生活のなかでどうしても疲れがたまってしまいます。理想は毎日、お店でヘッドマッサージを受けてもらうこと。でも、それは現実的ではないですよね。だからご自宅でテレビを見ているときなどに、マッサージをしていただき、頭皮をほぐしてもらっています。30秒だけでもいいんです。短時間でも続ければ「ちりつも効果」があります。それが結果として持続的な健康につながります。