お金を工面するために家も売った

── 裏を返せば、発掘を続けるために125億円もの資金を用意してきたことになります。どのようにして工面されたのでしょうか?

 

吉村さん:まず講演活動です。講演で1回およそ90分話すとして、景気のいいときは100万円程度は謝礼としてもらっていました。最盛期は講演だけで年間1億円くらい稼いだ時期もありましたよ。次にテレビの出演料です。多いときでレギュラーが週に8本、年間500本ほどのテレビ番組に出ていた時期がありました。ただし、テレビの出演料はそんなにもらえるわけじゃない。初回は1万円程度の番組もありました。     

 

スポンサーになってもらうため、企業にも協力を仰ぎます。とはいえ、容易ではありません。たとえば、1987年に私たちが発見した「第二の太陽の船」。古代エジプト最古の木造船なんですけど、2010年に発掘を許可されたものの、発掘権の期限が迫るなかで資金難に陥っていました。バブル崩壊後の不況で、企業の協力をなかなか得られず焦っていたところ、手を差し伸べていただいたのがニトリホールディングスの似鳥昭雄社長(当時、現会長)でした。5億円の資金援助をしてくださったんです。

 

そうした企業の支援があってもなお、資金がたりなくて困る場面は多々ありました。だから私の持ち家のマンションや、土地・建物なんかは全部売っちゃいました。いまは学長を務める福島の大学のそばに1LDKのアパートを借りてひとり暮らし。すべてはエジプトでの発掘を続けるためです。

 

── 我慢を強いられる生活を送られているのですね。

 

吉村さん:いやいや、私は好きなことしかやらないんです。エジプト考古学はその最たるものですから、窮屈な暮らしなんて一切思いません。むしろ、ふだんはスーパーで買い物して自炊生活なんですけど、料理好きの私にはうれしい。土日も趣味とする絵を描いたり、小説や詩を書いたりしています。好きなことに囲まれているんで、楽しい毎日ですよ。