クフ王の墓探しは死ぬまであきらめない

—— 2025年11月、エジプトに大エジプト博物館がオープンしました。東京ドーム約10個分という世界最大級の広さを誇る敷地に、10万点以上の遺物を展示しており、新たな観光スポットとして話題を呼んでいます。

 

吉村さん:私はオープニング式典に招待されました。現地の会場には世界中から招かれた300人ほどが来ていました。多くの考古学関係者はB席に集められていたんですけど、私が腰をおろしていたのはS席。最高待遇だったわけです(笑)。

 

—— 吉村さんへのリスペクトのすごさが表れていますね。その要因のひとつとして、エジプトで発掘にあたる多くの国が出土品を自国に持ち帰るのに対し、吉村さんは見つけた出土品のほとんどをエジプト側に納めています。そうした姿勢への感謝の念が大きいのではないでしょうか?

 

吉村さん:最初は惜しいと思いました(笑)。でもエジプトで発掘した出土品は、そこに住む先祖のものでしょう。だからエジプト側に返すのが正しいと考えたんです。出土品をテーブルに並べて取扱いを話し合う分配会議では、自国のものとして引き取ることを主張するのが通例ななか、私はそうせず分配を辞退。おかげで諸外国の関係者から陰口を言われたりもしましたけど、分配会議でエジプトの人たちのうらめしそうな顔を見ていたため、かわいそうな気持ちもあって持ち帰れなかったんです。

 

—— エジプトに60年もの間通い続け、現地の人たちと交流を深めながらともに発掘を進めてきた吉村さんならではの感覚なのかもしれません。念願とするクフ王の墓の発見、楽しみにしております。

 

吉村さん:もちろん、死ぬまであきらめませんよ。

 

取材・文:百瀬康司 写真:吉村作治