正社員も時短で肩身が狭い日々…昔目指した仕事への思いが再燃
京阪神のベッドタウンのとある市で、福祉施設の正規職員として働く林由実子さん(35歳=仮名)は、夫・小学校1年生と保育園(3歳・1歳)の3人のお子さんと暮らしています。職員として働く十数年の間に、3回の出産で休業・復帰したそう。
「職場は女性が多いので、育休などの制度は整っています。とはいえ、正規職員ならではの悩みがあって…」
出産するまでは、毎日フルタイムで8時間勤務、土日にもイベントや施設入居者の行事に参加し、宿泊研修なども頻繁にあったという由実子さん。産後は、本人の希望で9時から15時までの5時間勤務に変わり、宿泊の伴う業務はお子さんが小さいうちは不参加としました。子育てしやすい条件に変わり、よかったと思いきや…。
「福祉や介護業界はどこもそうだと思うんですが、人手が足りなくて、15時になっても仕事が全然、終わらないんですね。施設にはパートの方もたくさん働いているのですが、書類作成や問い合わせ対応など、正規職員でないと…という仕事も多く、結局毎日、保育園の時間を調整してもらって、16時ごろにやっと帰れるような状況が常態化しています。
職場は職場で、他の正規職員に私の残した仕事を肩代わりしてもらっているので肩身が狭いですし、やはり3回育休を取って時短勤務だと経験や知識の面でかなり遅れをとっているのを感じます。研修にも行けていないですし、子どもが3人いたら、夜や休日に本を読んで勉強…なんてほぼ無理なので。
さらに、ベテランのパートさんにも軽く見られている感じです。業務知識も他の職員より劣るし、子どもの熱などで突発的に休むのでいろいろ安心して任せられない…という感じなのでしょうね。とはいえ、注意しなくてはいけない場面なんかもあったりして、本当に言いにくいんですよ」
時短勤務の正規職員ならではのやりにくさを痛感している由実子さん。
「とはいえ、朝は子どもの支度をして送っていくだけで1日の何%かエネルギーを使っちゃいますし、仕事が終わってからも、3人のごはんにお風呂に、まだ夜泣きもありますし。時短でないと身体が持たない。職場からはフルタイムに戻ってくれという圧がすごいんですが(笑)。難しいですね」
1日中、休む間もない由実子さんですが、時短勤務のため金銭的な面では収入はダウン。お子さんが小さい間は欠勤がかさんで月の手取りが7~8万になり、保育料ですべて消えるような月も何度もあったといいます。
「もともと福祉系はお給料が安くて、しかも時短で基本給が下がるのでボーナスもガクンと減ります。ワンオペなので、急な発熱だと私が休むしかなく、あっという間に有休がなくなってしまうので、欠勤もつきますし…。それでいて、勤続年数は長いので負担の大きい仕事も回ってくるようになり、最近は持ち帰って働くことも多いんです。
仕事自体は好きなので、すぐに辞めようとは思わなかったのですが、子どもを育てている人は全員、時間の融通がきくパート勤務なんです。私もそうしたいと思って上司に何度も交渉したのですが、認めてもらえませんでした」
現在、主任に昇格し、責任のある仕事がますます増えてきたという由実子さん。自身のキャリアをどう思うか聞いてみました。
「この施設・業界では、私の進みは遅いもののキャリアダウンというわけではないと思います。ただ、私自身、子育てしながら管理職もするのは本当に大変で、キャパオーバーの日々で…。子どもにまだまだこれからお金がかかるので仕事は辞められないですが、少し落ち着いたら、実は転職しようと思ってるんです」
学生時代に学んでいた分野を学び直して仕事にしたいと考えているそうで、「一時的にはまたキャリアダウンですけど、人生一度しかないですしね、挑戦してみたいです」と由実子さんは笑いました。
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今回、キャリアの変化について2人にお話を伺いましたが、どちらの方も、半年や1年といった短いスパンではなく、長い目で見て満足な結果なら「キャリアダウン」ではないのではないか…と前向きに受け止めている様子が印象的でした。
それ以外にも、出産とキャリアダウンについては以下のような声が寄せられました。
「営業系の仕事でやりがいもありバリバリ働いていたのですが、残業続きで激務。産後はとても同じように働けないと思ったので人事に相談し、定時で帰れる部署に異動しました。しかし肝心の仕事が合わなくて…慣れていないうえにマニュアルが細かく、寝不足の頭でミスを連発してしまい、自己肯定感がダダ下がり中です」(恭子さん・32歳=仮名、お子さんは1歳)
「結婚前、夫は私にも仕事を続けてほしい、応援する…と言ってくれていたのですが、実際に子どもが生まれると、残業や接待の飲み会が断れないと言い出し、実質私のワンオペ育児に。私の職場は自発的に企画やプロジェクトを提案していかないと昇進できないのですが、家では家事育児に子どもの中学受験なども重なり、日々の業務をこなすのが精一杯でとても時間が取れません。子どものいない同期に比べるとキャリアが停滞してしまっています」(まゆみさん・39歳=仮名、お子さんは小学校6年生と3年生)
お子さんや家族の時間と、やりたい仕事との最適なバランスは一人ひとり異なり、夫婦や家族の分担もそれぞれ違います。あなたとご家族にとって、ベストな働き方とはどのようなものですか?
取材・文:高谷みえこ インタビュー時期:2026年1月 アンケート実施対象:20~40代女性100名