出産・育児の影響で、ときには不本意に、ときには自身の選択によってキャリアが停滞したり途絶えてしまったりする現象を「キャリアダウン」と呼ぶことがあります。このような状況に直面したら、あなたはどう感じ、どのように行動しますか?「正社員」という肩書きを守りながらも、揺れ動く2名の女性のリアルを追いました。
コロナ禍に仕事と育児の両立限界…医療現場から在宅の仕事へ
出産前はフルタイムでバリバリ働いていたのに、育休が明けると責任のある仕事から外されてしまうようになった。夫の転勤のため、正社員を辞めて転勤先のパートを転々としている。時短勤務になり、子どものいない同期や後輩は昇進しているのに自分は同じ場所で足踏みしているみたい…。
今回は、実際に出産・育児でキャリアが変わった2人のママから、そのときの状況や周囲の言動、そしてママ自身がどのように感じたのか、話を聞かせてもらいました。
最初に話を伺ったのは、中国地方の地方都市で、現在は自宅でWebデザイナーとして働く岡村さおりさん(37歳=仮名)。夫・子ども(小学校3年生と来年入学する男の子)との4人暮らしです。さおりさんは出産前は医療関係の仕事を10年続けていました。しかし20人ほどいる女性従業員のうち、妊娠出産後も職場に残ると決めたのはさおりさんが初めてだったといいます。
「産休・育休に対応する制度が整っておらず、それまでは妊娠した女性は全員、退職していたんです」
仕事にやりがいを感じていたさおりさんは育休を申請し、産後無事に復帰することができましたが、職場の反応は協力的とまではいえないものでした。
「育休を取りたいと交渉したとき、子どものいる男性の先輩は親身になって話が通るように考えてくれました。おかげでなんとか受理されたものの、上司から『泊まりの勤務ができないのは困るなあ』『人手がたりないから、早く復帰してほしい』などと言われたり、産休が近づくと『休めていいね』といった言葉をかけられ、複雑な気持ちでした」
復帰後は時短勤務を選択したものの、仕事の割り振りがフルタイム前提だったため、現場でできる仕事がなく事務作業を手伝うような日が続いたそうです。
「ちょうどそのころ、コロナのパンデミックが始まりました。当時は未知のウイルスで、夫も医療関係者なので夫婦で感染したら子どもはどうなる?と。仕事は好きだったのですが、時短で収入も減っているうえ、結局子どものいる女性が働き続けられる体制が作られない職場にこれ以上いても…と考え、産婦人科の医院へ転職することにしました。
ところがその職場もブラックで…事前に聞いていた話と全然違う勤務条件だったり、保育園の迎えがあるのにあやうく帰れなくなりそうなことも。夫とも話し合った末、2週間でやめてしまいました」
これからどうしようと落ち込んでいたとき、さおりさんに「何か勉強して、家で働ける仕事をしてみたら?」と提案してくれたのも夫の健二さんだったそうです。
「そこからオンラインスクールに通い、独立して今は4年目です。最初はほとんど稼げない時期もありましたが、今はフルタイムで働いていたころと同じくらいの収入があります。子どもに何かあってもすぐ駆けつけてあげられるので満足しています」
ご自身のこれまでの道をキャリアダウンだと思いますか?という質問に対して、さおりさんはこんなふうに評価しています。
「最初の職場で育休復帰したときは、ものすごく大きなキャリアダウンでした。初の出産後の仕事復帰に向けてあんなに頑張ったのに、ほとんど何も職場の体制を変えられなかったことに対しても無力感があり、精神的にダメージが大きかったです。次の産婦人科も、結局すぐにやめることになり、さらにダウンですね。でも今は、仕事のやりがいもあり、収入も家族と過ごせる時間も確保できて、やっとアップしたと思っています!」