豊かな漁場である富山湾に面した富山県射水市。特産品のひとつがベニズワイガニなのですが、なんと、市の学校給食では6年生になるとこのカニが丸ごと1匹!食べられる日があるのだそう。あまりに羨ましすぎるこの取り組みですが、そもそも始まったのには理由があって── 。
地元の漁業組合からの発案で22年前に始まった

── 富山県射水市では、「子どもたちが地域にある自然や食文化に関する理解を深める機会になれば」という新湊漁業協同組合の発案で、2003年度より旧新湊市の小学校(8校)を対象にベニズワイガニを丸ごと1匹給食に出す取り組みを始めたそうですね(※アレルギー対象者を除く)。
「ベニズワイガニと射水市の知名度アップ」や「地産地消」、「漁港への親しみを」と始まりましたが、2005年の市町村合併後は射水市内すべての小学校(現在14校)で6年生を対象に行われていると伺いました。
「ベニズワイガニが丸ごと1匹食べられる」というインパクトの強さから、今では冬になるとさまざまなメディアでも名物給食として取り上げられ、市内・それ以外問わず幅広く認知されている驚きの学校給食となっています。今年はすでに実施されたのでしょうか?
射水市教育委員会学校教育課(以下、学校教育課):はい。今年も2025年10月から市内各小学校にて実施されており、最初に実施した学校ではセレモニーとして、新湊漁業協同組合組合長からベニズワイガニについて生態や漁法について話を聞いたのち、女性部の方々から食べ方の説明を聞きながら、みなさん夢中になって食べていました。
「カニ給食」とは言っているのですが、実際には給食メニューとは別物で、同時に喫食しているというのが正確なところなのですが、子どもたちは大喜び。「6年生になると食べられる」と各校、楽しみにしている子どもたちは少なくないそうです。
── ベニズワイガニの味や地産地消を知るだけでなく、食べ方も教えてもらえるなんて贅沢な「食育」ですね!
大人になっても「あんなおいしいカニ食べたことない」

── セレモニーで射水市教育委員会・金谷教育長がお話しされていた「大人になっても味を覚えておくことで、ふるさとに誇りをもってほしい」という言葉、たいへん素敵だなと感じました。2003年からのスタートということで、現在20年以上たっているこの給食。すでに成人している方の会話などから、「地域の誇りとして浸透しているな」と実感することはありますか?
学校教育課:親子で「カニ給食」を経験するにはまだ少し早いかと思いますが、かつてカニ給食を体験した人で「あんなにおいしいカニは食べたことがない」と話してくれた人もいました。そういったお話を聞かせていただくと、「子どもたちの心に残るイベントとなっていたのだな」とうれしく思うのと同時に、この取り組みの意義や趣旨が浸透しているのではないかなと感じています。
地域の漁業組合が提供してくれるベニズワイガニとなれば、おいしくないわけがありません。目利きの方々が提供してくれたカニを小学生のうちに食べられるなんて、子どもたちだけでなく大人になってからも自慢できる経験だと思います!
能登半島地震の年も、カニの提供を諦めなかった

── 2024年1月1日に発生した能登半島地震では、漁港も含め、富山県射水市も被害を受けられたそうですね。その年もカニ給食は実施できたのでしょうか?
学校教育課:被害は決して小さくなかったのですが、当時の6年生が卒業前に、カニをいただいたお礼とともに「地震で大変だと思いますが、これからも頑張ってください」というメッセージを送りました。そうした児童からの励ましのメッセージもあったからか、例年カニ給食を実施する10月も、まだ被害の回復には至っていなかったのですが、新湊漁業協同組合は射水市内にある全小学校へのカニ提供を諦めず、続けてくださいました。
ベニズワイガニをひとり1匹。6年生だけとはいえ、市内各小学校に提供するとなれば、確保するだけでもかなり大変なことでしょう。カニが獲れる時期はかぎられています。復興どころか復旧すらままならなかった部分があるなかでも、カニの提供を継続し続けたのは、地域の「誇り」があったからだと思います。射水市のカニ給食は、「豪華」「おいしい!」それだけでない地域の思いがあるのです。
「地域の名物給食」という言葉を聞いたとき、射水市の地産地消「カニ給食」とともに、その食育にかけた大人たちの想いがたくさん詰まっていることを思い浮かべていただけたらうれしいです。
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地元の特産品を味わう食育の活動として20年以上続く射水市の「カニ給食」。みなさんも、大人になっても思い出に残っている給食はありますか?
取材・文/可児純奈