視聴者の「大きな胸が気になる」というクレームへの本音
── そんななか、竹中さんが担当されていたニュース番組を観た視聴者から「胸が気になってニュースに集中できない」というクレームが届いたそうですね。その後、半年ほどお仕事をセーブすることになったと聞いています。どういった状況だったのでしょうか。
竹中さん:ネット掲示板などで「胸が大きいキャスターがいる」と知った週刊誌の記者の方が、沖縄まで取材に来たんです。そのときに撮られた私の写真が週刊誌に載ってしまい、万が一危険な目に遭うといけないという理由で、私は自宅に待機するよう指示されました。1週間ほどだったと思います。会社が私を守るために自宅待機という決断をしたので、ある意味、不可抗力だったのですが…。ただ、それが原因かわかりませんが、そのあとの契約更新で半年ほど仕事量が減ってしまい、モヤモヤした状態で過ごしていて。悲しいとか恥ずかしいというより、どこに想いをぶつけていいのかわからず悔しい気持ちが大きかったです。

── 竹中さんにとっては、ご自身の見た目のことでのクレームというのもまた心苦しかったと思います。
竹中さん:誰も悪くないから、よけいつらかったですね。ニュースを見ていた視聴者の方にとっては、私のバストが気になってしまった。それって、間違いとかではないじゃないですか。そのクレームを私に伝えなければならなかった上司も、「ごめんね」って申し訳なさそうに、私を気づかいながら伝えてくださったんです。私にしても、自分が悪いとは思いたくなかった。自分の体型を否定することになってしまいますから…。それでも、その件に関しては、とりあえず丸く収めるために、会話上では「すみません」と謝っていました。それがなんだか悔しかったです。
「バストが気になる、わざと強調しているんじゃないの」というようなことを言われるのは、もう仕方ないと感じていました。どうしてもそう受け取る人はいるので。でも、自分から「胸が大きいことを気にしている」と受け取られるような発言はしたくなかったんです。同僚が心配してくれても「気にしていないよ」と伝えていました。当時は、周りの人に「大変だったでしょ」と気遣われること自体が、かわいそうな人だと思われているような気がしてもどかしかったです。
── その後、NHK沖縄を退職され、フリーランスに転身されました。そのタイミングで写真集を自費出版したそうですね。これはどのような経緯があったのですか。
竹中さん:「ありのままの竹中知華として生きたい」という気持ちが生まれて、それを実現するためには、5分間のニュースの仕事を続けるのは難しいと思い、退職を決断しました。この一件が、「私が私らしく仕事をしていけるのは、ほかの情報が入ってはいけない5分のニュースを読む場所ではないんだ」という気づきにもなったんです。
写真集を出したときも、記者の方から「批判されてつらかったんですよね?」って聞かれたのですが、そうではなくて。自分から発信することで、手に取りたい人だけが手に取ってくれる。そういう世界で写真集を出すことで、きちんと「これが私です」って伝えたかった。「批判されてつらかった」って認めたら、自分の身体が好きじゃないと認めてるような気がして、それは違うと思っていたので。
── 写真集が、また竹中さんが変わるきっかけとなったのですね。
竹中さん:そうですね。就活をしていたころからずっと、自分を好きになろうと努力している人生でした。とはいえ、最初の写真集を自費出版した当時は、とにかく「これが私です」を伝えたいという思いが先行していたので、気持ちが追いついていなかった気もします。
ラジオ沖縄でアナウンサーとして活動するようになり、自分の言葉で発信することができるようになって自信がつき始めて。そこからようやく「自分が好き」って、はっきり言えるようになりました。
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現在はラジオ沖縄のアナウンサーとして、リスナーからの絶大な人気を誇る竹中さん。今年11月、男性誌のデジタル写真集に挑戦して話題となりましたが、出版社からのオファーを最初は冗談だと思い、断るつもりだったといいます。その気持ちを変えたのは、他ならぬ番組のリスナーだったそうです。
取材・文/池守りぜね 写真提供/竹中知華