「今日こそ里親をやめよう」限界に達した私を救った「命綱」
── しんどい状況ですね…。心が折れそうになっていたのではないでしょうか?
齋藤さん:いや、当時は完全に折れていましたね(苦笑)。今日こそやめよう、今日こそ児童相談所に電話しようと毎日考えていました。正直、小春のことが全然かわいいと思えなかったんです。
── そのつらい状況をどうやって乗り越えることができたのですか?
齋藤さん:小春との関係を続けることができたのは、里親の先輩方のおかげです。「もう無理です」と先輩方に泣きつくと、「こういうときはこうしてごらん」と、一歩先のアドバイスを具体的な知恵として教えてくれたんです。本当にありがたかったです。

実はそのころ、同時期に里親研修を受けていた知り合いの里親が、里子を虐待死させてしまうという悲しい事件に遭遇して…。親が近くに住んでいて、実子もいて、環境的には私とほとんど同じ方でした。
私との違いは何だったのか。確実に言えることは、私は里親サロンに参加して、先輩里親さんたちのサポートを受けることができていたけれど、彼女はそうではなく孤立していたということです。里子の子育てに必要な知恵や情報がないまま、ひとりで全部背負うと、必ず行き詰まってしまうんです。
── 昨年秋には、広島で正規の研修を受けて里親登録された夫婦が、里子を虐待して逮捕されるという事件も起きました。おそらく誰にも相談できず、行き詰まっていたのではないかと想像します。
齋藤さん:その方の状況はわからないので一概には言えませんが、もしかしたら、そんなこともあったのかもしれません。里子にはそれぞれいろんなバックグラウンドがあるので、受託したときに赤ちゃんであっても、ケアが必要な子育てになることもあります。里親同士が支え合うコミュニティと、そこで培われた経験知の共有の必要性を強く感じます。真面目で一生懸命な里親さんが多いので、自分で頑張ろうとすることも多いです。だからこそ周りからの声がけやサポートは不可欠だと思います。
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小春さんと出会って16年、先輩里親に支えられながら絆を深めてきた齋藤さん。3歳で「私なんて死んだほうがいい」と口にした小春さんが、「生きててよかった」と話してくれるまでになり、本当に感慨深いと話します。そして今、次に続く世代の里親のために、親子で新たな活動を始めているそうです。
取材・文/小松﨑裕夏 写真提供/齋藤直巨