小さな命の覚悟に「里親をやめてはいけない」と誓った日

── それはすごい進歩ですね。齋藤家にせっかく慣れてくれたのに、1か月で別れるのはつらかっただろうと想像します。

 

齋藤さん:期間が1か月延長され、合計2か月預かりましたが、お別れのときはやはりつらかったですね。別れの前日、ベビーカーに里子を乗せて買い物に出かけたのですが、涙を堪えつつ里子のひざかけを直していたとき、突然、里子が私をじっと見て、その後すぐに視線をそらして言ったんです。「なおちゃん、泣かないで」って。その勘の鋭さには、本当に驚きました。

 

「どうして泣いちゃダメなの?」と私が聞くと、「私はお父さんのところに行かなきゃならない。私もつらいけど、泣かないように頑張っているから、なおちゃんも泣かないで」と答えてくれて。それを聞いてもう堪えきれず、号泣してしまいました。

 

── 2歳とは思えない痛切なひと言ですね。

 

齋藤さん:2歳という年齢は、本来ならわがままだけを言っていればいい時期です。それなのに、この子は我慢できないことを我慢して、こんなにも頑張っている。そう思ったら涙が止まりませんでした。

 

実はそれまで、「何も力のない私だから、里子は生涯にせめてひとり」と考えていました。でも、この小さな子の精いっぱいの頑張りに直面した瞬間、「この子のような子どもたちがまだ何万人もいるのに、本当に里親をやめていいの?」と思い直したんです。いつかこの子と再会する日が来たら、親として恥ずかしくない人間になっていたい。その強い思いとともに、「里親をやめちゃいけない」と決心させられました。

 

とはいえ、短期預かりの里子との別れはあまりにつらくて。次は長く関係を継続できる長期の里子を希望しようと心に決めました。

 

 

その翌年、長期里親として3歳の女の子を迎えた齋藤さん。ところが、愛着の課題からくる嘘や吐き戻しといった行動に悩み、「かわいいと思えない」と心が折れそうになる日々が続きました。「もうやめたい」と毎日悩んでいた齋藤さんに、いつも救いの手を差し伸べてくれたのは、先輩里親の存在だったそうです。

 

取材・文/小松﨑裕夏 写真提供/齋藤直巨