車椅子ダンスに出会って変わった人生
── 車椅子ダンスは車椅子に乗ったままの演技と、車椅子に乗らずに、車椅子を押したり引いたり回したりする演技があるとのこと。また、車椅子に乗らずに義手義足でダンスをする場合は、創作舞踊というそうですが、車椅子ダンスや創作舞踊をはじめてどんな変化がありましたか。
キャロットさん:イベントに呼んでいただいたり、パラリンピックにも出たりと、人前に出る機会がどんどん増えていきました。イベントで遠征するときは、同じく車椅子ダンスのメンバーから電車やバスの乗り方や駅員さんへの対応、デコボコした歩道の車椅子の乗り方だったり、当事者だからこそわかることもたくさん教えてくれました。
また、何よりみなさん、堂々としているんです。車椅子に乗っているからと言って遠慮している感じはまったくなくて、至って普通。前に進みたければ「すみません、私、そこ通ります」と声をかけながら進んでいくし、いちいち人目を気にしていない。はじめは「すごいなぁ」と思いながら見ていましたが、「自分も堂々としていいんだ」と次第に思えるようになって、気持ちが徐々に開放的になっていったような気がします。車椅子ダンスをはじめてから外に出ることに抵抗がなくなったし、新しい出会いもたくさんあって、本当によかったと思います。
── 事故から2025年で10年経ちますが、今、どんなことを思いますか?
キャロットさん:事故にあったとき、娘は中学2年生でした。私と3匹の愛犬のお世話や、家事に専念してくれて、20歳になってから外で働くようになりました。娘には感謝しかないですし、頭が上がりません。「ありがとう」という言葉とともに、ひとり親になったときからずっと苦労させてきて「申し訳ない」という気持ちもあります。でもやっぱり生まれてきてくれて「ありがとう」と感謝が大きいです。そして愛娘と私の心を支えてくれた3匹の愛犬に感謝しています。
また、娘以外にもいろいろな方と繋がったことも大きな財産です。自分ひとりではここまで来られなかったと思います。この先は、美容師としてカットやパーマをするのは難しい。でも、周りの方々に練習のモデルになっていただいて、左手でまつ毛カールの施術ができるようになりました。ほかにも、耳つぼジュエリー(イヤージュエリスト)・メンタル心理カウンセラー資格を取得。今後はたくさんの人たちのお役に立てるよう、またお店が出せたらいいなと思っています。
取材・文/松永怜 写真提供/キャロットyoshie.