車体が押しつぶされ、割れたフロントガラスは目の前まで迫っていた ── 。2015年10月13日の早朝、シングルマザーとして中2の娘を育てていたキャロットyoshie.さんは大きな交通事故にあい、右手足を切断することに。(全2回中の1回)
右側に「ヌルッとするような感じがした」

── 2015年10月13日早朝、車を運転中、対向車がセンターラインを超え、キャロットyoshie.さん(以下、キャロットさん)の車と正面衝突する大事故が発生。キャロットさんは事故の影響で右手と右足を失い、人生が一変しました。多大なる苦労や困難があったかと思いますが、まず、事故にあう前の生活についてお聞かせいただけますか。
キャロットさん:娘が2歳のときに離婚して、シングルマザーとして私・娘・3匹の愛犬と共に過ごしていました。仕事は美容師として自分のお店を運営しながら、夜はドライバーとして勤務。事故当時は娘が中学2年生だったので、事故にあうまでは毎朝お弁当も作っていました。
── そうした日常を過ごすなかで事故に遭遇。事故当時の状況について教えてください。
キャロットさん:早朝4時半くらいですね。片側1車線の住宅街を走っていたら、ものすごい勢いで対向車がこちらに向かってきたんです。
「ぶつかる!」と思った瞬間、車の右側に対向車が「ズッ…!!」とぶつかって。急いでドアを開けなきゃと思ったら、すでに右のドアがない。衝突とともに持っていかれたらしいんですけど。衝突音が大きくて、早朝にも関わらず人だかりができたようで、「救急車呼んだから大丈夫だよ」という声が聞こえました。右側が何かヌルっとするような感じがして、自分の右腕がないことに気づき、「すみません、私の右腕ってついてないですか?」「ないです」「見つけたら救急隊員の方に渡してください」とやりとりをして。そのときは、切断された腕が残っていれば後からつくと思っていたんです。
車体が押しつぶされたまま体が挟まれていたし、フロントガラスが割れて顔の前まで迫っていて身動きが取れなかったので、周りの人にエンジンを止めてもらうようにお願いしました。
── かなりの緊急事態ですが、冷静に判断されている印象があります。
キャロットさん:意外と冷静でしたね。病院に運ばれて手術室で麻酔が効くところまでは、ほぼ覚えています。痛みは感じなかったんですけど、後から医師に聞くと「アドレナリンが出ていたからじゃないか」と言われました。救急車に運ばれたことも覚えていて、受け入れ先の病院が全然決まらなくて、救急隊員の方が必死に探してくれる声が聞こえるなか、やっと22件目の病院で受け入れてくれたのがわかりました。
22件目の病院は、いちばん最初に連絡した病院でしたが、一度受け入れを断られて、再度連絡を入れて、病院からOKをもらう前に「今向かってます!」と言いながら連絡してくれたようです。
病院に到着すると、先生たちがバタバタと輸血の手配をしている声や、周りの緊迫感が伝わって、私ってそんな危ない状態なんだ…、と思ったら急に怖くなってきました。「娘とワンコたちを置いて死ねないんです!とにかく命だけは助けてください!」とお願いして、その後、手術室に入って麻酔を打たれてからは意識がないです。