失敗するから自分の理解も限界も知れる

── 効率やスピードが求められる時代に、珍しい考え方かもしれません。たとえばゲームでも、まずは攻略本を見ずに自分のやり方で試してみるんですか?

 

野田さん:そうですね。先に自分で解いてから、答え合わせの感覚で攻略本を後で見ることが多いです。人が「これはやっちゃダメ」と言うことでも、実際にやってみて「なるほど、こういう意味か」と、理解して初めて腹落ちする。そうじゃないと、自分の血肉にならない気がするんです。これは、学生時代の授業にも通じる感覚かもしれません。

 

── そうしたこだわりがあると、学校の授業は少し窮屈だったのでは?

 

野田さん: まさにそうでした。勉強自体は嫌いじゃなかったけれど、授業は大嫌いでした(笑)。うちは兄がすごく優秀で、ピンチのときだけ教えてもらうんですが、兄は教科書通りの説明をするんじゃなくて、僕がわかる言葉に「翻訳」して教えてくれるんです。「ここは覚えなくていい、ここだけ理屈を理解すれば解けるから」って。

 

そうすると一気に理解が進んで、それまで4点だったテストが満点になることもあって。 「教える側が相手に合わせてくれると、こんなに違うのか」と実感しました。だから、教わること自体が嫌いなんじゃなくて、「合わない教わり方」が苦手だったんだと思います。そんな兄はいま、教師をしています。

 

── 筋トレや食事の管理についても、トレーナーなどはつけずに?

 

野田さん:ぜんぶ自分で調べて、試して、失敗しながら覚えてきました。トレーナーについたことは一度もないんです。筋トレの情報はSNSや専門家の解説でつねにチェックしていますが、最終的には自分の感覚がいちばんたしかだと思っています。

 

人に教わると、その人のフォームやペースに引っ張られてしまう気がして。どの筋肉に効いているか、どんなリズムが合うかは、人によって全然違う。だからこそ、自分の体でたしかめないと納得できないんです。最初のうちは限界がわからなくて、やりすぎて腕が上がらなくなることも。でも、そうやって体で「自分ができる程度」を覚えるしかない。筋トレって、突き詰めれば自分の体を使った実験なんですよ。

 

野田クリスタル
ゲームを本格的に作り始めたのは2013年ころから。すべて独学で始めたという

── とはいえ、独学でやり抜くには相当エネルギーが必要ですよね。途中で行き詰まったり、投げ出したくなったりすることもあるのでは?

 

野田さん:独学って、誰にも強制されないから、サボろうと思えばいくらでもサボれてしまう。だからこそ、ちょっとでもしんどくなると、投げ出そうとする自分との戦いになる。行動し続けるためのエネルギーは、突き詰めると「好き」かどうか。結局は、そこに尽きると思います。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/野田クリスタル