いまではマッチョはお笑いで不可欠な存在に
── そうなんですか?なぜそんな風潮があったのでしょう。
野田さん:マッチョは痛い目に遭ってもリアクションがおもしろく見えない、という理由からでした。しかも見た目がいかついために強そうで怖いから、笑いづらいんです。当時、芸人にとって筋肉は笑いを削ぐものという認識がありました。
でも、いまは逆で視聴者の感覚が変わった。ガリガリな人が痛い目にあうと、「かわいそう」と感じられてしまう時代です。そのいっぽうで、どんなに叩かれてもびくともしないマッチョ芸人なら、タフそうで、能天気で、ちょっとバカっぽい(笑)。そういう存在が笑いの受け皿になっているんです。
── マッチョ芸人が、新しい役割を担っている、と。
野田さん:僕は、マッチョだけは「イジってもいい貴重な存在」だと思っているんです。だって、自分がなりたくてなったわけではないデブやハゲとかと違って、筋肉は本人が望んで努力して身につけたものだから。だから、筋肉をバカにされようが、何をいわれようが、気にならない。張りぼてだと言われても、「そうですけど?」と返してしまう(笑)。むしろ、そういう立ち位置でいいんじゃないかと思ってます。
マッチョ芸人が増えたことで「不死身そうで能天気なキャラクター」という新しいポジションが生まれたわけです。お笑いには、「笑われることを引き受ける人」が、絶対に必要なんです。イジられてこそ芸人。だからこそ、こういう「笑いのためのイジられ役」は、これからも絶対に欠かせない。そう思っています。

── 2021年には、みずから発案してパーソナルジム「クリスタルジム」を立ち上げました。芸人さんがトレーナーを務めるという発想がユニークですね。
野田さん: ジム通いでいちばん大事なのは、やっぱり通い続けることなんです。でも、途中でやめてしまう人が本当に多い。トレーニングのやり方とか食事の管理よりも前に、「ジムに行くのが楽しみになる理由」が必要だと思ったんです。芸人と一緒にトレーニングできるなら、それがモチベーションになったり、芸人が醸し出す雰囲気でトレーニング自体もちょっと楽しくなると思います。
── 野田さんご自身が、ふだん心がけている健康法を教えてください。
野田さん:おすすめは「骨盤回し」です。お尻を前後に動かすだけでも全然違います。骨盤は体の中心なので、骨盤まわりがどれだけ動かせるかがとても大事。老化にも関係してきます。たとえば、簡単にできるものとしてはフラフープもいいですよ。気軽にできて全身に効く。家でもすぐ始められるのでぜひ取り入れてみてください。
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筋トレを始めたきっかけは「ダンクシュートを決めたい」という単純な願望だったという野田さん。3か月で17キロ増量し、見た目の変化が周囲との関係にも影響。筋肉がコミュニケーションのきっかけになったといいます。そんな野田さんですが、実はあらゆる乗り物に酔うという過敏な体質の一面も。365日酔い止め薬を飲み、体調管理と向き合ってもいるそうです。
取材・文/西尾英子 写真提供/野田クリスタル