父が亡くなって母にも変化が

辛島美登里
穏やかな家族関係を築いてきた辛島さん

── 気持ちに穴が空いてしまったような。その後、お母さんの様子はいかがですか?

 

辛島さん:父が亡くなって3年くらい経つと、少しずつ元気になっていきました。すると、今まで母の眠っていた部分が徐々に目覚めてきたのでしょうか。父が生きているときは、母は自分がやりたいことを抑えてきたと思うんです。でも、父が亡くなった後の母を見ると「もう自分がやりたいようにやりたい。私は自由が大好き!」とよく言っていて、相当自我が強い人だったんだなと、父が亡くなった後に知ることになりました。もともと社交的なほうでしたが、いろいろなところに出かけるようになって、きっと時代が違ったら母はバリバリお仕事をしていたんじゃないかな。

 

父が亡くなって20年経ちましたが、母は父がいるときとは違った自分らしさも出しながら、とても大切な時間を生きてきたと思います。

 

── お母さんは、辛島さんのコンサートを毎年楽しみにしているそうですね。

 

辛島さん:毎年クリスマスコンサートをやっていて、父が生きているころから来てくれました。去年は母が圧迫骨折をしてしまって断念しましたが、今年は元気になってまた行きたいと兄夫婦に話しています。


父も母もおしゃれさんで、母は高い服を買うときは必ず父を連れていって、「私じゃ決められないから、お父さん選んで」とうまくやっていたんです。いまだにその感じが続いていて、「美登里ちゃん、あなたのコンサートに何を着て行ったらいいと思う?」「紺のワンピースでいいんじゃない?」「あれは一昨年のコンサートで着たから同じものは着れないわ」って春ごろからずっとやってるんですよ。「コンサートは冬だからね」と言っていますが、コンサートが母のモチベーションのひとつになっているうちは、今を楽しんでるのかなと思っています。

 

取材・文/松永怜 写真提供/辛島美登里