「絶対、ハニートラップ」と断られ続けるも

川﨑花音
麻世さんと出会ったころ

── それは素敵なエピソードですね。

 

川﨑さん:もともとのイメージがよくなかったので、ギャップがすごいですよね。それからちょっと気になりだして、食事会で彼を観察するように…。後輩などの相談に一生懸命のっている姿を見て、最初と印象が大きく変わっていきました。

 

「ぜひもっと話してみたい」と思うようになり、ふたりで食事に行かないかと私のほうからお誘いしたんです。私としては絶対にOKをもらえるだろうと思っていたのに、まさかのお断りをされて。何回誘っても「ふたりはちょっと…」とはぐらかされ、気づけば5年くらい、そのようなやりとりをしていました。個人的に連絡を取ることもなく、会うときは友人も含めて大人数でというような状態がずっと続きました。

 

── 5年ですか!

 

川﨑さん:あまりに断られるので、私も「絶対にOKさせてやる」とちょっと意地になっていた部分があると思います(笑)。ただ、あとから聞いた話によるとその時期、夫はハニートラップを仕掛けられることが多かったそうです。そんな状況のなか、私があまりにもふたりで食事に行きたいと言うので「これは絶対ハニートラップだ」と思ったようで、警戒してのらりくらりと断わり続けていたみたいです。

 

── 麻世さんはさぞかし警戒していたんでしょうね。そこから、おふたりの距離が縮まるきっかけがなにかあったのでしょうか?

 

川﨑さん:裁判資料の読み込みをお手伝いしたことです。夫はそのころ裁判中で、舞台の仕事をしながら、裁判のための大量の資料の読みこみをせねばならなかったのですが、時間をつくることが大変だったようで。もちろん弁護士の方も、夫がすべき必要な作業は伝えてくれるのですが、裁判資料は辞書くらいの厚さがあって。そこから必要な情報を探して確認するのが本当に大変だったので、私もお手伝いとして、要点をピックアップしたり要約したりして夫に伝えることになりました。

 

── それで連絡を取るようになったんですね。

 

川﨑さん:さすがに大人数の食事会でするような話ではなかったので、それを機にふたりで会う機会が増えましたね。さすがに夫も「これはハニートラップではない」とわかったようで、ようやく信じてもらえました(笑)。私の方もやりとりしていくなかで、まじめで誠実な人ということがよりいっそうわかりました。

 

さらに、ちょうどそのころ、夫が機能性発声障害という病気を患って。声が出なくなるなど仕事にも影響が出ていたので、ガス抜きできるように悩みを聞いてあげるようにしていました。そのうち次第に、距離が縮まっていきました。機能性発声障害はだいぶよくなりましたが、今も残っています。たまに不調がありますが、上手につき合っています。

 

 

裁判が終わり、その後、2024年に結婚することになった花音さんと麻世さん。「40歳までには結婚したい」とずっと伝えていた花音さん。プロポーズは40歳の誕生日に花音さんの母や友人の前で突然行われたそう。事前に聞いていなかった花音さんは驚いたそうですが、周りの人たちがとても祝福してくれて、結婚式も温かなものになったそうです。

 

取材・文/酒井明子 写真提供/川﨑花音