介護で接する人の毎日が少しでもよくなってほしい
── 現在はデイサービスで働いているそうですが、これまでいろいろな介護施設で働いた経験があるそうですね。
岩佐さん:特別養護老人ホームや訪問介護など、この4〜5年で6か所の施設で働きました。介護の仕事の情報発信をしているので、もっと勉強して経験を得たいということもありますし、何が自分に合っているのか知りたいという思いもあって職場を変えてきました。自分が子育て中の今は、泊まり勤務がなく、レクリエーションなどの活動が多いデイサービスがいちばん合っているなと思っています。
利用者さんと一緒に体を動かしたり、カラオケなどをしたりするのは私自身の気分転換にもなって楽しいですし、介助量が少ないので、子育てに体力を残しておきたい今にぴったりです。以前、特別養護老人ホームで、入居されている方のオムツの交換などをしていた際は体への負担が大きかったので、子どもが大きくなるまでは、デイサービスがいいのかなと感じているところです。

── 介護の仕事はどんな方に向いていると思いますか。
岩佐さん:人のことをよく見ていて、ちょっとしたことに気づける方ですね。あとは優しい気持ちを持っている方に向いていると思います。介護士にはいろんな方がいて、お話しするのが苦手な方もいます。淡々と仕事をするタイプの方もいらっしゃいますが、実は利用者さんはよく見ていて、「あの人、あんまりしゃべらないけど優しいのよね」という話を聞くこともあります。
自分の得意なことや強みを活かしていけるのが介護の仕事の特徴だと思います。たとえば訪問介護は、ご自宅にお邪魔して、身体介護だけではなく頼まれたものを買って来るとか、掃除機をかけるなどの家事もします。今、私が働いているデイサービスでは、介護度が低い方はトイレまでの廊下を歩く際の見守りだけで、トイレの介助がない場合もあります。半日型でお食事がないとか、入浴がない施設もあるので、排泄やお風呂のお世話が不安という方にもいいと思います。
── 介護業界は人手不足が叫ばれて久しいのですが、どうしてこの問題が解決しないと思いますか。
岩佐さん:実際の仕事が見えにくい仕事だからかなと思います。利用者さんのプライバシーもありますし、仕事の特性上、なかなか内部を見てもらうのが難しいと思うんです。私自身もそうでしたが、「ちょっとやってみようかな」と気軽に思えるきっかけが少ないのかなと思います。両親や祖父母の介護の際に初めて仕事を目の当たりにしたという方が多いです。
あとは、大変という世間のイメージがあって、さらにお給料面や人手不足というマイナスなニュースで先行しているところもあるのかなと。同じ職種でも会社によって違うように、ひとくちに介護といっても、施設によってまったく働き方は違います。ドライバーさんとして送迎に携わる方もいらっしゃれば、パートや時短で働く方もいらっしゃいます。定年退職された方も、子育て中で短時間で働きたいという方にも合っていると思います。実は柔軟な働き方の選択肢がたくさんある仕事なのに、なかなか届きにくいのが現状ですね。
── 長年の友人で、介護タレントの西田美歩さんと一緒に介護の魅力を伝えるイベントなどをされています。みなさんにどんなことを伝えたいですか。
西田さん:介護の仕事に興味を持つきっかけを作れたらいいなという思いでやっています。何から知ればいいのかわからないという方が大半だと思うので、具体的な仕事内容やおもしろさなど、みなさんに知られていない部分をお伝えできたらと思っています。
── 岩佐さんが感じる介護の仕事の魅力はなんですか。
岩佐さん:誰とも話さずうつむき加減で来られた方が、活動しているうちにいきいきとしてくることや、車椅子で来られた方が、杖をついて歩けるようになっている姿を見たときですね。その逆で、だんだん食欲が落ちてしまうとか、歩けなくなってしまうということもあるのですが、少しでも日々を過ごしやすくするためのお手伝いができたらいいなと思っています。
病院での治療のように根本的なところを治すこともできませんし、孫が会いに来てくれたときほどの笑顔は出せないかもしれませんが、少しずつでもその方の毎日がよくなってほしいという気持ちで接しています。それに対して「人生が少しでもよくなっているんじゃないか」と気づけたときに、幸せややりがいを感じますね。
取材・文/内橋明日香 写真提供/岩佐真悠子