アメリカ横断のロードトリップで心が浄化された

── アメリカにはどのくらい滞在されたのですか?

 

ユージさん:1年間です。20歳の誕生日を迎えて日本に帰ってきました。本当は、3か月で日本に帰るつもりだったんです。でも、アメリカ暮らしを始めたころに、暴漢に襲われて金品やパスポートを奪われ、パスポートの再発行に時間がかかるというので結果的に長期滞在になりました。それで父が「アメリカにはお前のおばあちゃんも、お父さんの兄弟もたくさんいるから、家族みんなに会いに行こう」と言って、父が住んでいたカリフォルニア州からおばあちゃんが住むイリノイ州まで、アメリカ横断のロードトリップをすることになりました。ふたりで車の運転を交替しながら、2週間かけて旅をしました。

 

── 父と息子のロードムービーみたいですね!

 

ユージさん:本当にそんな感じでした!ルート66をひたすら走り、途中で地平線の向こうが見えずにゆらゆらと蜃気楼のようになっていたこともあるし、寒くて震えたエリアもあるし、タイヤがパンクしたことや、テールランプがきれて警察に車を停められたこともありました。

 

ずっと男ふたりで過ごしているので、ケンカもしました。ささいなことですけどね。アメリカのヒットチャートが聞きたい僕と、トーク番組が聞きたい父とでラジオのチャンネル争いをして。でも、そうやって濃密な時間を過ごして父との仲も深まり、14年間のブランクが一気に縮まった気がしました。

 

── おばあちゃんや親戚との再会はどうでしたか?

 

ユージさん:みんな会うとハグしてくれて、僕はこんなに家族がいて愛されていたんだな、というのを実感しました。シングルマザー家庭で母は仕事に忙殺されていたし、母方の親戚とは疎遠だったので。僕が求めていた家族からの愛を一心に受けて、自分のなかの虚勢や穢れみたいなものがそぎ落とされて浄化され、人に対してやさしい気持ちになり、感謝の気持ちでいっぱいになっていきました。