「少年院を出たくない」と話す子の胸の内
── 心が痛むお話です。自分が愛される存在だと実感できないまま、成長してきたのかもしれません。
Manamiさん:少年院にいる間は法務教官がいろんなことを教えてくれ、支援してくれます。でも、退院すると彼らはひとりで生きていかないといけないんです。少年院からの退院が近くなると、「ずっとここにいたい。外の世界ではこんなに相談できる人もいないし、居場所もない」と訴える子もいるらしくて。こういう子たちのために、どんな社会的なサポートが必要なんだろう…?と考えてしまいます。
このように「居場所がない」と感じる人は、少年院だけに限りません。刑務所から出所した人のなかには犯罪を繰り返してしまう人もいます。支えてくれる人がいなかったり、孤立してしまったりするために、自暴自棄になり、再犯してしまう場合もあるそうです。もし、出所者を社会の一員として受け入れ、支援してくれる場所が増えたらなあ…と思うこともあります。
Megumiさん:ただ、「受け入れる」「支援する」と言葉で表現するのは簡単でも、実際には難しいですよね。私やManamiさんは、たくさんの受刑者を見てきたから、罪をつぐなおうと誓い、必死に努力している人たちがいるのを知っています。そして、犯罪を犯した人も、ふつうの人と変わりありません。誰でもほんの少し足を踏みはずしたら、塀の中に入ることになるかもしれないんです。でも一般の人たちからすると、どうしても警戒してしまうのもわかります。

── そうですね。現実問題として、出所者と距離を縮めるには、多くのハードルがあるように感じます。
Manamiさん:出所後、居場所がなく孤立してしまう場合もあること、孤立する絶望感から、再犯してしまう場合もあることを知ってもらえたらいいなと思っています。「Paix2という歌手は、ずっと刑務所でコンサートを開いているらしい」というところから興味を持つ形でもいいんです。もし余裕があったら、イベントや講演会に足を運んでもらい、一瞬でも「こういう問題もあるんだな。どうしたらいいんだろう」と、考えてもらうだけでも違うのかなと思います。元受刑者のなかには更生して、あらたな人生を歩んでいる人がたくさんいます。そういった人もいると少しでも気づいてもらえたらいいなと思います。
Megumiさん:いっぽうで、一般の人に関心を持ってもらう難しさも感じます。やっぱりふつうに生活をしていると、元受刑者について興味を抱く機会ってなかなかないと思って。だから私は、積極的に知ってもらおう!とまでは思っていないんです。
社会で生きている人たちは、それぞれがいろんな立場でさまざまな役割を持って生きています。私は、縁があってコンサートで受刑者を支援することになりました。だから、その役目に一生懸命向き合って活動を続けていくつもりです。一般の人が、私たちの取材記事を見たときに「こういう活動をしている人もいるんだね」と、一瞬でも思ってくれたら、それだけですごくうれしいです。