女性デュオ・Paix2(ペペ)のメンバー、ManamiさんとMegumiさんは、これまで刑務所や少年院など、500か所以上の施設を訪れて受刑者と向き合ってきました。長年その現場を見てきたなかで感じた思い。罪を犯す行為はあってはならないことですが、犯す人の背景には人格とは別の闇もある。そのことに気づかされたインタビューでした。

受刑者が高齢化する実態

── Paix2さんのおふたりは、これまで500か所以上の刑務所や少年院でコンサートを行ってきました。活動期間は20年以上。長年刑務所や少年院をめぐってきて、どんなことを感じますか?

 

Manamiさん:刑務所は「時代の縮図」のような存在だと思うことが多々あります。たとえば、どの刑務所の受刑者も高齢化の傾向があります。私たちがプリズンコンサート(通常は刑務所でのコンサートは「慰問」と呼ばれるが、受刑者と共に考える場になるようにとふたりのこだわりから命名)を始めた20年前は、受刑者の平均年齢は40代前半でした。それが近年は50代前半くらいになっているようです。世間が高齢化するにつれ、受刑者の年齢も少しずつ上がっているんですね。受刑者がほかの受刑者を介護する場合もあるようです。

 

また、裁判員制度の導入以来、「重罰化の傾向」が事実としてあり、結果的に刑期が長くなっているようです。無期懲役の方でも、以前であれば15年ほどで出所していたのが、近年は出所が難しくなっていることも高齢化に影響していると聞きました。

 

Megumiさん:私は思っていた少年院のイメージとのギャップに驚かされました。最初のころの私は、「少年院にいる子たちはすごい不良なんだろう。反抗的で歌なんて、ちゃんと聞いてくれないはず」と、思いこんでいて。ところが、実際に行ってみると、みんな熱心に歌を聞いてくれるんです。通常、刑務所や少年院でコンサートを開くときは法務省や各施設などで厳しいルールが定められているのですが、ある刑務所では一人ひとりと握手が許可されていました。

 

すると、みんなしっかり私たちと目を合わせて手をしっかりと握ってくれて、素直な子たちだというのが伝わってきました。この子たちはどうして少年院に来ることになったんだろう。もし犯罪を犯す前に、間違ったことを正してくれる大人が周囲にいたら、この子たちもふつうに生活ができたかもしれない…と胸が痛みました。

 

Paix2
真ん中はともに活動を続けるマネージャーの片山始さん

── 罪を犯したことを肯定はできませんが、そこに至る以前に、なんとか対応できなかったのかと考えてしまいますね。

 

Manamiさん:最近の少年院は、「どうしてこの子が?」と思うような、ごくふつうの子がたくさんいて驚きます。振り込め詐欺などに巻き込まれる場合が多いらしいです。  

 

「なぜその行為が犯罪になるのか」を理解していない場合もあるそうです。たとえば、万引きで捕まった子のなかには「本屋さんには本がたくさんあるんだから、1冊くらいもらってもいいだろう」という感覚の子がいるとのことで。「万引きをしたら、お店の人が利益を得られなくなって困ること」が、わからないらしいんです。少年院に入るまでに、常識的なことを学ぶ機会が得られなかったのでしょう。刑務所でどんなことが罪になるのかということを、一つひとつ教わるそうです。

 

Megumiさん:自己肯定感が低く「私なんか幸せになる価値がない」と思いこみ、自暴自棄になってしまう子も多数いるそうです。法務教官(少年院で少年を指導・教育する人)が「あなたは幸せになっていいんだよ」と言い続けることで、「自分を大事にしていいんだ」と、気持ちが少しずつ変わっていく子もいるようです。