「受刑者いじりもあり」刑務所がもりあがった瞬間

──「受刑者いじり」とは…!刑務所は触れてはいけない言葉が多いようなイメージがあるのですが、大丈夫なんでしょうか? 

 

Megumiさん:そう、私たちも最初のうちはすごく気をつかい、MCも事前にきっちりと台本を作りこんでいました。そんなとき、Manamiさんがコンサート中、まさかの大失言をしたんです。

 

Manamiさん:ある刑務所にコンサートに行ったとき、受刑者の人たちが、私たちのために大きな看板を作ってくれたんです。それがすごく立派で素敵で。コンサート中に「この看板を作ってくれたのは誰ですか?」と、声をかけました。

 

本来であれば、受刑者の人たちはその問いかけに声で反応してはいけません。ところが、そのときに「はい、僕です」と返事が返ってきて。ちょっと目立ちたい人だったんでしょうね。思わず「えっ?すごく大きな看板だけど、本当にひとりで描いたんですか?」と聞き返すと、「ウソでーす」と返ってきて。つい、「ウソついたら、また罪がひとつ増えますよ」って、言っちゃったんです。

 

── おぉ!それは…(笑)。

 

Manamiさん:口に出した瞬間「しまった。終わった…」と。受刑者の気持ちをさかなでしてしまったのではと、自分の血の気がサーッと引く音が聞こえたほどです。ところが、会場は大ウケで大爆笑。あの瞬間の空気は忘れられません。「こういうのもアリなんだ」と思って。

 

Megumiさん:気をつかいすぎるより、ある程度ざっくばらんなほうが心を開いてもらえるんだと教えられました。もちろん、言っていいこととそうでないことの線引きはしています。でも、おっとりとした雰囲気のManamiさんは、ぎりぎりのラインを攻めても許されてしまうんです。

 

私たちの定番曲に『元気出せよ』という歌があるんですね。その歌はサビの部分でこぶしを振り上げる振付です。声出し禁止の原則はあるようですが、刑務所の方針によっては、一緒に行うのがOKなところもあります。Manamiさんは受刑者の人たちに振付の説明をする際、「こぶしを振り上げるときに、近くに嫌いな人がいても、どさくさにまぎれて殴ったらダメですよ」なんて言っていて。それがまたおもしろがられているみたいで。

 

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2023年、コンサートの機材はすべて自分たちで設営する

── 笑いが距離を縮めるんですね。

 

Megumiさん:Manamiさんだからこそ許される発言です。私とManamiさんは、まったく正反対のタイプ。私はまじめできっちりとした性格です。職人気質でもあるから、歌で生きていくと決めてから音楽ひとすじ。恋愛も全然しないでここまで来たし、実力を少しでも磨き、歌で思いを届けたいという一心です。この活動は私の使命だと信じて取り組んでいます。

 

Manamiさん:私は恋愛をしたこともあったし、いつかは結婚したいとも思っていました。でも、この活動とどう両立するのか?と考えているうちに、タイミングを逃した感はあります(笑)。Megumiさんと私は、お互いにない部分を補っている気がします。コンサート中も、それぞれの個性が引き立て合い、化学反応が起きている感覚です。やっぱり、活動を通して学ばせてもらうことが多いから、この先もずっと続けていきたいなと思います。