貯金は尽き、生命保険を解約したこともあるけれど

── 全国を駆け回っているおふたりですが、刑務所でのコンサートが主な活動となると、収入面はいかがでしょうか?

 

Megumiさん:刑務所からの謝礼はボランティア程度。正直、お金にはなりません。マネージャーさんと3人で車移動だし、機材も自分たちで運び、設置もしています。以前は経済的に困り、コンビニのおにぎりひとつで過ごす日もありました。

 

マネージャーさんもお金のやりくりはそうとう苦労したみたいで。貯金を使い果たし、生命保険まで解約して活動費にあてたことがあったそうです。でも、不思議とピンチになると誰かが助けてくれます。やっぱり、誰かのためを思って活動していると、めぐりめぐって自分に戻ってくることを実感します。歌を通して、思いが誰かの心に届いていると実感できるって、本当に幸せなことだと思います。

 

私たちはこの活動を「受刑者のため」だけに行っているわけではありません。メッセージを伝えると、その言葉は私たちにも「人を傷つけてはいけない」とか「感謝の気持ちを忘れてはいけない」など、深く染み入ります。 更生しようと一生懸命努力する元受刑者の姿を見ると、すごく励まされます。活動を通して学ぶことがすごく多いです。めぐりめぐって「自分たちのため」でもあるんだなと思うことがたくさんあります。お金では得られない、貴重な経験をたくさんさせていただいています。

 

 

これまで20年間に渡り、全国500か所以上の刑務所や拘置所、少年院でコンサートを開いてきたPaix2さん。刑務所を取り巻く状況の変化も感じているそうで、近年は受刑者の高齢化が進んでいることを肌で感じているそう。また、少年院では「どうしてこの子が?」というごくふつうの子が多く、なぜその行為が犯罪になるのか、理解できていない場合があるのだそう。そうした問題に関心を寄せることは難しいとは理解しながらも、自分たちの活動を通して少しでも考えてもらう機会がつくれたらと、今日もふたりは活動を続けています。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/Paix2(ペペ)