「この人何も変わってない」16年ぶりの再会で確信

── お母さんを見てきて、「僕は結婚なんて絶対にしないと心に誓った」こともあったそうですね。
若井さん:結婚はしないと思っていたのは幼少期ですね。僕みたいな思いをする子をひとりでもこの世に生み出すのはよくないと思っていましたから。芸人になってからも母親に対する憎しみがぬぐいきれずにいて、もし道で遭遇したらその場で殺してしまうのではと思うくらいの時期がありました。
そんな僕を見て友人が「いっそのこと、一度会ってみたら?そんなに心が苦しいなら区切りがつけられるかもしれない。仲直りするかもしれないし、もうこれっきりだと吹っきれるかも」と言ってくれて、どっちに転んでもいいかと思って覚悟を決め、16年ぶりに会いに行ったんです。ちょうど10年くらい前のことです。
連絡先がわからないので、いとこに連絡をとって母の連絡先を聞いて連絡して。「昼ごはんでもどうですか?」と誘い、待ち合わせをして再会しました。自分が今芸人をしていることを伝えると、「全然知らんかったわ」と。いとこや親せきなどは知っているし、誰かしらに聞いていることは明らかで、「嘘つけ」と思ったんですけど(笑)。
そしたら、母が「お母さん、謝らんといかんと思ってた。お兄ちゃんばかりよくしてあんたには悪いことばかりした。すまなかった」と言ってきて。僕は「いや、大丈夫です。それがあったから今の僕があるので」と言ったら、「そうか。それ聞いて安心したわ。ほんで、お兄ちゃんはね、外国の有名大学に行って大企業に入って偉くなって永住権もあって今は家族4人で暮らしてる」と、相変わらずの調子で兄の自慢話が始まって。「もういいです、そういう話をしに来たのではないです」と言うも、まったく変わっていない母のペースに巻き込まれ…。「お母さん、去年10歳年上の人と再婚して、その人は大学の教授だった人で財産があって、高層マンションに住んでいて…」と、今度は自分の自慢話が始まって。76歳で10個上の人と再婚してたんですよ。
16年ぶりの再会によって、「この人、何も変わってない」ということが知れましたね。あと、もはや憎しみとか怒りなどの感情はなくなっていて、完全に他人だと思えたんです。「もう二度と会うことないな」と吹っきれました。そこから連絡をとっていません。