子どものことを考えパチンコ中心生活から脱出

── ゆーびーむ☆さんのそういった前向きな「ギャルマインド」が、いつのまにか夫にも伝染していったんですね(笑)。でも、その情熱を「本業に向ける」という選択肢は…?

 

ゆーびーむ☆さん:たしかに、言われてみればそうですよね(笑)。あのころは日々を乗りきることが最優先だったんです。でも、そんななかでも忘れられないできごとがあるんです。それは、クリスマスイブの夜のことでした。

 

いつも通りふたりでパチンコに行ったのですが、その日はどちらも全然うまくいかなくて。「もう帰ろうか」という空気になっていたんですけど、「せっかくだから、いまある残り少ない玉だけ打って帰ろう」と。私が打っていた台を夫に譲り、トイレに行って戻ってきたら、まさかの大当たり(笑)。大量の玉の入った台が積みあがっていました。

 

──まさかクリスマスの夜に、そんな展開が待っているとは…。

 

ゆーびーむ☆さん:そうなんです。その直後に、夫が指輪を買ってくれました。1万円程度の小さな指輪でしたが、当時の私にとっては、ものすごく思い出深いクリスマスプレゼントでしたね。

 

ところが、夫は「俺が当てたんだから俺の功績だ」と言い出して。「でも、台を選んだのは私」と応戦して、結局、また口ゲンカになってしまって(笑)。でも、そんなことを言い合っているうちに、「こんなときまで何やってんだろ?」ってお互い笑えてきて。そのとき「この人と一緒なら、どんな状況でも笑っていられる」と、心から思えたんです。

 

── なんだか、ちょっと感動話のように聞こえますけど…。

 

ゆーびーむ☆さん:いや、でも、これはパチンコの話ですからね(笑)。ただ、その後、自分たちの将来を考えるようになったんです。 きっかけは、「子どもがほしいね」という話でした。私が30代半ばで夫は50歳近く。年齢的にも、そろそろ未来を考えなきゃいけない時期でした。そこで、お金や時間の使い方を見直して、パチンコに割く時間を少しずつ減らしていきました。

 

もし子どもができたら、どっちかがパチンコ屋の外で抱っこして待って、交代でパチンコを打つ、そんな生活になるかもしれないと想像したら、それは絶対に違うよねって。夫が「最悪、誰かにお金を借りればいい」なんて、のんきなことを言うのを聞いて、これは本気で変わらないとまずいと、私は腹をくくりました。

 

芸人という仕事は浮き沈みが激しく、営業のない時期はほとんど収入がありませんでした。しかも夫は「家から近いところじゃなきゃ働きたくない」と言い出すタイプで、働き方に悩む時期もありました。私自身、以前に「さらば青春の光」さんが運営する五反田のバーを深夜帯だけ間借りして『BEAM BAR』という形で活動していた経験があったので、「いっそ、私たちで働く場所を作っちゃおうか」と提案したんです。子どもができたときに、好きな時間に働けるようにしておきたいという思いもありました。

 

結果的に、中野に小さなバーをオープンさせて、いまは夫も店に立っています。芸人仲間がアルバイトで手伝ってくれたり、お客さんが差し入れを持ってきてくれたり。失敗も多いけど、それも含めて、夫の社会人デビューを見守っているような気持ちです(笑)。

 

 

子どものことを考えてパチンコに割く時間を少しずつ減らしていったふたり。しかし働き方に悩み続けていた夫を見て、ゆーびーむ☆さんが決断したのは、夫婦で柔軟に働ける場としてのバー開業でした。経営者としても店員としても、夫は相変わらずのポンコツっぷりを披露しているそう。「未来のために、今が踏ん張りどころです」と明るく語ってくれました。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/ゆーびーむ☆