今は同級生の距離感に悩むこともあるけれど
── 生後10か月の高熱から始まって、診断名がつかないまま、ずっと不安な気持ちで過ごされてきたと思います。また、小学校は周りの環境にも恵まれていたようですが、中学生になるといかがでしたか?
夏希さん:中学で初めてはぐみに会う人も多いですし、はぐみも周りも思春期に入ってきて、以前のように気軽に友だちに物事を頼みにくくなった感じはあるようです。学校内の移動はみんなが階段で移動するなか、はぐみは「一緒に来て」とは言えず、ひとりでエレベーターに乗ることもあるようだし、小学生のころは誰かが車いすを押してくれましたが、中学から電動車椅子になったし、ひとりで移動することが多いのかな。
みんなとの距離感に迷うこともあって、学校に行きたくないと思う日が多かったように思います。でも、先生と仲良くなることが上手だったし、ツラいときは保健室で自分の状況を相談しながら自分の居場所を作っていったので、学校を休むことは今のところないですね。
── 自分で環境を作っていったのですね。
夏希さん:そうですね。体育祭もはじめは参加しないと言っていましたが、放送係を任されて頑張っていたし、合唱祭ではみずから進んで合唱をするなど、自分ができることは楽しんでいますね。生徒会に立候補して生徒会副会長になったり、学校代表の英語スピーチに選ばれたりと、充実した中学生活を送っています。
── ご自宅での様子はいかがですか?
夏希さん:もともと話好きですし、下に次女(小6)、三女(小1)と妹がいる3人姉妹なので、家ではずっとしゃべっています。私に対しても勉強から友だち関係まで、なんでも包み隠さず話してくれるので、親としては安心しています。
病気を患ったことで人が経験しないこともたくさん経験してきましたし、この先もまだまだ課題はあると思います。今はリハビリを続けながら、こちらが手伝うこと、自分でできることを見つけながら進んでいってもらえたらいいなと思います。
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病気と共に生きているはぐみさんは3人姉妹の長女で、次女、三女と共ににぎやかに過ごしています。しっかり者の次女にお手伝いをお願いすることが多いそうですが、次女は「手伝いが必要なこと、そうでないこと」を見極めながら関わっているそう。今は同じ学区外の学校に通っているそうですが、勉強を頑張っていることなどを学校で耳にすると、家の中ではわからない姿を知って、「お姉ちゃん、外ではちゃんとやってるんだな」と尊敬の念を抱いているそうです。
取材・文/松永怜 写真提供/駒場夏希