10歳のときから摂食障害で拒食や過食を繰り返し、精神的にも相当追い込まれていたという安藤瞳さん。気分転換でボウリングを家族としたことで、心から楽しさを実感し、プロボウラーを目指すように。病気に悩まされながら、前をむけた転機について話を聞きました。
親から「愛されてない」思いから拒食症に
── 高校卒業後に日本プロボウリング協会のプロボウラー資格取得テストを受験して合格。2010年にプロボウラーとしてデビューを果たした安藤さんですが、食行動に異常がみられる精神疾患「摂食障害」を10歳で発症したとうかがいました。まだ幼い少女時代のことですよね。
安藤さん:当時の私は完璧主義で、母親にほめられたい願望が強くありました。欠点のない子どもでいたいと考えていて、勉強もすごくできるほうでした。何でも「いちばん」になりたくて、私は体も小さくて細いタイプだったのですが、ビジュアルでも1等賞がほしかった。自分がいちばん細く見られたいと思ったんですね。それがいわゆる拒食症のきっかけでした。
いちばんになったら褒められる。親の愛情を求めていたんだと思います。じつは勝手に親からは愛されていない思い込みがあって、母自身も覚えていないようなふとした会話のなかにあった「お姉ちゃんが生まれたから、ふたり目はほしくなかった。お父さんが望んだから次女(私)が生まれた」というような言葉が私に刺さっていて。「私は(親にとって)邪魔だったんじゃないかな」という複雑な思いがずっとあったんです。だから「(親には)体重が落ちていく自分の体を心配して、見てほしい。でも、心配はかけたくない」、そんな相反する気持ちがあったように思います。

── 拒食症の診断はすぐに出たのでしょうか。
安藤さん:体重増加を極端に恐れて食べなくなる拒食症と、大量の食べ物を口から流し込むように食べてその嫌悪感から嘔吐するなどの行動がみられる過食症。合わせて摂食障害といわれますが、当時はこの疾患への理解が進んでおらず、地域の小児科から紹介状をもらって訪れた市民病院で初めて診断されました。
母も得体の知れない病気と向き合っているので、「食べない様子への違和感やそれを案ずる不安感」で心が揺れて、イラだっているようでした。それまで、親子でケンカなんてしたことはなかったのに、このころは衝突するように。治療法が確立しない状態での診察のなかで、「わがままに育てられた子ども」「お母さんの言うことが聞けない、わがままで食べない」と、母親が病院の先生に言われることもあって、家族全員がつらかったですね。