夢が見つかって心も軽くなった
── 簡単には克服できない病気なんですね。
安藤さん:再び入院をすることになったのですが、以前の自分よりはこの病気について理解ができていたので、治療方針をしっかり守り、2、3か月で退院できました。つらい治療生活のなかで「楽しいことをしよう」と家族で相談して、ボウリングに行ったんです。それがとても楽しくて。そこから教室に通い、プロボウラーを目指したいと思ったんです。端から投げたほうがボールは曲がりやすい、投げる時の指の使い方や回転をかける際の投げる位置を考えるなど、奥深いところにすごく惹かれていったところがありました。
── ボウリングに自分の居場所を感じたんですね。その後はプロボウラーとして活躍されます。当時、病気は克服できたのですか。
安藤さん:いえ、それが難しくて。1試合ボウリングができるだけの体力や体重はあったのですが、ふだんの食事はなかなかできませんでした。食べ物のカロリーはだいたい頭に入っているので、低カロリーな自分が許したものだけ食べる窮屈な食生活を送っていました。21歳でプロボウラーになったのですが、プレッシャーを感じる場面が訪れると、自然と拒食の症状が出てきてしまい、プロテストの前も拒食症状と闘っていました。
何も考えずに食べられるようになったのは30歳を過ぎたころです。20年くらいこの病気と向き合ってきたのですが、私の命を救ってくれた先生が当時、小学生の私に「30歳くらいになったら、この病気が軽くなるときがやってくる」と、言ってくれていたんです。早期の治療や周囲のサポートが回復に影響を与えるようで、おそらく時間の経過とともに、私自身ダメな部分がある自分を少し許せるようになったというか、生きられるだけのエネルギーを摂りながら生きたらいいんじゃないか、と思えるようになって。
それと、あるメディアの取材を受けた際、摂食障害を患っていることを公に話したことで、誰にも理解されず自分だけで葛藤していたものが軽くなった感覚がありました。ファンの方からも温かい言葉をいただき、「病気を持つ自分でも認めてもらえるんだ」と思えたことも大きかったです。心の回復ができたことで、体重のことを気にせず過ごせる時間が増えていきました。

── いまも通院をされているんでしょうか。
安藤さん:30歳を過ぎたころまでは、長年診てもらっていた先生のカウンセリングに通っていましたが、いまは通院せず、楽しくご飯を食べられるようにまで回復しています。現在、先生とは手紙のやりとりをする程度ですが、病気と闘ってきた私の人生を支え、命を守ってくれた、かけがえのない存在です。
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摂食障害で苦しんだ経験を持つ安藤さん。入退院を繰り返すなかで家族とたまたま行ったボウリング場での体験がかけがえの時間になり、ボウリングに興味を抱くようになります。そこからボウリング教室に通い出しますが、その際にプロボウラーの「プロの道を目指してみたら」という提案が運命を変えることに。「病気があって学校にも行けず、学生としての楽しみを見いだせなかった私の居場所」だと感じて、プロになることを決意したそうです。
取材・文/高田愛子 写真提供/安藤 瞳