結婚20年目「対話」がいちばん大事だった

── 大学時代に出会い、結婚20年目とのことですが、ずばり中村家の夫婦円満の秘訣はなんですか?

 

中村さん:やはり対話だと思います。あと同じ価値観を持っていることも秘訣といえるのかもしれません。悲しいこと、つらいこと、うれしいこと、その感覚を合わせることはいちばん難しくもあり、いちばん大切なことだとも感じています。

 

たとえばお互いの友人に悲しい出来事があったときに、自分ごとのように受け止められるかどうか。そのあたりの感覚が同じでなければお互いを信頼するのは難しいですよね。

 

実は次女を出産したとき、私は第14週で破水してしまって、前置胎盤で命の危険があるとお医者さまから言われていたんです。主人は「子どもをあきらめることも考えてください」と伝えられていたそうなんですが、私と子ども、どちらかを選ぶなんて決められないですよね。

 

それを私にどう伝えるべきかいろいろ考えていたみたいで。数日間ほとんど眠れなかったそうですが、当時、主人は自分ごとのように、むしろ私よりもつらそうに泣いてくれたんです。そのときはこの人と結婚して本当によかったなと思いましたね。

 

── 中村さんはその事実をいつご主人から伝えられたんですか。

 

中村さん:数日後です。もし(子どもを)諦めるにしてもその病院では処置ができないので、どうするか考えて決めてくださいと医師に告げられたんです。私はどうしても諦められずほかの病院の医師にも話を聞きたいと思い、転院先を探しました。

 

相談したお医者さまからは「今の時点でお腹の子どもをあきらめる必要はないし、万が一、ダメだったとしてもそれは自然な流れであって、あなたが決断して手をくだすことはないよ」と言っていただき、絶対安静という条件で、出産まで自宅で過ごすことを認めていただきました。お医者さまには私の気持ちに寄り添っていただき、どうなったとしてもこの先生にお任せしたいと思い、気持ちも強くなれました。自宅では約5か月寝たきりだったので、午後に私の母と主人のお姉さんが交互に手伝いに来てくれて本当に助かりました。

 

── 中村さんはもちろん、ご主人も心身ともに大変だったと思います。

 

中村さん:朝は主人がいつもより1時間ぐらい早起きをして子どもたちの弁当を作り、子どもたちを起こした後は学校や幼稚園に行く準備をさせ、バス停に送り出す。それまではすることがなかった洗濯機も回してくれました。

 

そのときは、主人がアスリートとして大切にしていたルーティンは完全に崩壊しましたけど、その翌年にMVPを取れたので、その生活が彼にとっても何か気づきになったのではないかなと思います。