手術で1か月しゃべれず精神的に限界が

── ありのままを受け入れてくれるとは、とてもいい環境だったのですね。中学に進学してから治療を始めたとうかがいました。
あやかさん:初めて手術をしたのは中学3年生のときです。当初は骨の成長が止まる20歳くらいまでは難しいと言われていましたが、中学2年生のときに受診した病院で「成長段階でも手術はできる」と言われたんです。中学生になって「みんなと同じ左右対称の顔になりたい」と思うようになっていたこともあり、手術を決意しました。そこから現在まで18年かけて15回ほどの手術を行っています。
── 具体的にどのような手術をするのでしょうか?
あやかさん:骨が成長しないので骨を伸ばす手術やそこに脂肪を移植する手術、目の位置や左耳の大きさを整える手術など。一気にはできないので、期間をあけてちょこちょこやっています。
中学3年生のとき最初にやったのは、成長しない顔の左側の骨を伸ばして前に出す手術でした。これがこれまででいちばんつらかったです。まず手術で金具を顔にさして、1か月かけてそこについているボルトで数ミリずつ骨を前に出していきます。それ自体は思ったよりも痛くはないのですが、それをするために上あごと下あごを固定する必要があり、歯茎に針金をさして口を縛るんです。
その状態で夏休みに1か月近く入院したのですが、これが本当につらくて。口を開けることができないので話すこともできないし、食事も流動食。入院中に行った2回目の手術で固定している器具を外してもらえると思っていたのに外れなくて…。最後には「もう無理!」と精神的に限界を迎えて、少しずつ固定する器具を外してもらうほどでした。器具を外してもらって1か月ぶりにしゃべったときは、自分の声が変わったように感じました。
── 聞いているだけでも痛そうです。
あやかさん:痛さでいうと脂肪移植の手術も痛みがすごいです。私の場合は太ももとお尻から脂肪を取って顔に移植したのですが、脂肪を取った部分がめちゃくちゃ痛くて…。痛すぎて普通に座ることもできなかったですね。
現在、直面している葛藤は…「決断が難しい」
── 今後も手術はされるのでしょうか?
あやかさん:手術直後は痛さやつらさが大きいのですが、手術をしても肉がたれてきたりしてバランスが悪くなるので、落ち着いてくるとまた手術したいという気持ちが大きくなるんです。治したいところはまだまだあって、自分が納得する状態になるまでには時間がかかると思っています。
私の場合は形成手術なのですが、整形手術をした人が一度やると止められなくなる気持ちと同じというか。もっとこうしたいという欲がどんどん出てきてしまうんですよね。いつまで続けるのか、すべては私の気持ち次第なので、そこの決断が難しいなと本当に思いますね。
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昔からおしゃれが大好きで、アパレル業界で仕事をすることが夢だったあやかさん。しかし、眼帯で左目を隠しているせいで、採用面接でもつらい言葉を投げかけられ、採用されないことが多かったそうです。しかし、夢を諦めず何社も採用を受け続けるなかで、眼帯を個性として理解してくれる会社に巡り合うことに。現在は大好きなアパレル業界で働きながら、自分の病気についても当事者として発信を続けています。
取材・文/ 酒井明子 写真提供/あやか