「いまは血糖値が220…」ちょっと高いな

── ふだんから血糖値の管理はどんなふうにされているんでしょう。

 

コージーさん:腕に「リブレ」という小さな測定器を貼っているのですが、スマホを近づけるだけで血糖値がすぐにわかるんです。いまは220…ちょっと高いな。「1型」の場合は、リブレで定期的に血糖値を測り、数字が高いとインスリンを打って下げるんです。リブレは2週間に1回交換しています。

 

── 1日中、ご自身の体調と向き合う生活なのですね。現在は、人工透析も受けていらっしゃるとか。

 

コージーさん:6年前、52歳のときから受け始めました。腎臓の機能がほぼ失われているので、老廃物をろ過する人工透析が必要です。いまは週3回、人工透析に通っていますが、処置に4時間ほどかかるので、その時間を利用して映画やドラマを見たり、ものまねのヒントを探したりして過ごしています。といっても、画面はぼやけて見えないのですが、番組の副音声を聞きながら頭の中で想像していますね。

 

── 日常の過ごし方や情報収集のしかたも、以前とは大きく変わったのではないですか?

 

コージーさん:目が見えないぶん、耳が頼りです。例えば、施設での館内アナウンス。これまでさほど気にとめたことはありませんでしたが、いまは僕にとってすごく大事な情報で生命線になるので、聞き逃さないようにしています。

大病を知って、執着がなくなった

── 大病を経験すると人生観が変わるという方も多いですが、病と向き合う年月のなかで、コージーさんの心境にも変化はあったでしょうか。

 

コージーさん: ありましたね。以前とはずいぶん違います。よく「健康のありがたさを知っているのは病人だけ」といいますが、まさしくその通り。少しでも体調がいい日があると、それだけで喜びを感じます。

 

自分の体が思うように動かせない不自由やつらさを知って、以前のような執着がなくなりました。昔はもっと尖っていて、同業者に対しても、「なんであいつがテレビ出ているのに俺は出てないんだ」なんて妬んで、不満を言っていました。30代まではずっとそういう気持ちがありましたが、いまはすっかり消えうせました。命や健康に比べたら、そんなことはもうどうでもいい。今日を生きていられるということ、それだけでありがたいんです。

 

 

20代で糖尿病を発症してから約30年になるコージー冨田さん。治療を怠った時期もあり、現在は視力をほとんど失い、人工透析を続けながら生活しています。40代で見えにくさを感じ始め、6年前には急激に悪化。今は真っ白な霧の中で、ぼんやりと輪郭が見える程度だといいます。それでも、「生きがい」といえるものまねの舞台があるからこそ、今も気力を振り絞って日々を送っています。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/コージー冨田