健康のありがたさを知るのは、病気になってから。糖尿病が悪化して、視力をほぼ失うなどして、その境地にたったコージー冨田さんは現在58歳。異常を感じたのは、のどの渇きからだったそうです。この30年、糖尿病と向き合ってきた日々を聞きました。
急に喉が渇き始め、お酒が弱いのにビールを…
── タモリさんや笑福亭鶴瓶さんなどのものまねで知られるコージー冨田さんは、20代から約30年にわたり、糖尿病と向き合ってきました。現在は糖尿病の影響で「目がほとんど見えていない」状態だと伺いました。いまは、どの程度見えているのでしょうか?
コージーさん:40代のころから見えづらさを感じていましたが、6年ほど前から急激に見えなくなりました。いまは、ずっと真っ白い霧のなかにいるような感じですね。モノの輪郭はぼんやりと見えるけれど、それが何なのかはわからない。テレビの画面もすりガラス越しのようで、誰が映っているのか判別できません。
信号も見えないし、段差などの障害物がいちばん怖い。外出時は奥さんやマネージャーなどの肩を借りて、杖をついて出かけます。ちなみにいま、この取材で目の前にいる記者さんの顔も認識できないので、僕の好きな斉藤由貴さんの顔を想像しながらしゃべってます(笑)。

── それは、むしろ光栄です(笑)。糖尿病を発症したのは、20代なかばとのこと。当時はどんな様子だったのでしょうか。
コージーさん:最初に異変を感じたのは、尋常じゃない喉の渇きでした。例えば、それまでお酒なんて弱かったのに、はてしなくビールが飲めてしまう。「酒が強くなったな」と勘違いしていたんです。当時は、ものまねのステージに加えて飲食店の経営もしていて、生活はかなり不規則。暴飲暴食を繰り返し、体重は一時113キロもありました。ところが、食べているのに急にやせていったんです。おかしいなと思って病院へ行ったら「立派な糖尿病です」と、診断されました。
糖尿病には、免疫異常などでインスリンがほとんど出なくなる「1型」と、生活習慣や遺伝的要因による「2型」があります。一般的にイメージされるのは2型ですが、僕の場合は「1型」。ただ、発症当初は2型だった記憶があって、医師からも「途中で1型に移行したのでは」と言われました。原因はよくわかりませんが、まれにそういうケースもあるそうです。インスリン注射を始めたのは40歳くらいからです。当時は仕事の忙しさやそこまで気に留めなかったこともあり、診断から15年くらい病気と真剣に向き合わず、放置してしまいました。