「わが子と生徒は違う」子育ての難しさを痛感

── ご自身が父親になり、子育てや家庭学習に対しての考え方に変化はありましたか?

 

葉一さん:小学6年生と3年生の息子がいますが、かつて塾講師をしていたころに保護者の方から聞いた言葉が身に染みています。当時、担当していた生徒の親御さんは教師をしている方がたまたま多かったんですね。学校の先生ですし、家庭でお子さんも教えられるんじゃないですか?と何度か聞いたことがあるのですが、「先生も親になったらわかると思いますけど、わが子と生徒は違うんです」とみなさんおっしゃっていて。その言葉の意味をやっといま理解しています。自分の生徒に対して絶対に言わないようなひと言を、わが子には言っちゃうんですよね。

 

── たとえばどんなひと言でしょうか?

 

葉一さん:「早く宿題やりなさい」「なんでまだ勉強してないの?」といった言葉です…。このストレートな親目線の言い方って、子どもにとってストレスなだけで全然プラスの言葉じゃないんですよ。自分の生徒だったらもう少し言い方を工夫して、その子に合わせた声かけをするはずなのに、わが子になるとできないときが出てくる。特に自分に余裕がないときは、つい言っちゃって、後で反省しています。細かいことですけど、積み重ねることで子どものストレスはたまっていくと思うので、日々自分を振り返りながら子育てしています。

 

── 世のお母さんたちが共感できる悩みだと思います。

 

葉一さん:子育てって本当に難しいですよね。20代のころに比べて親御さんの葛藤や子育ての悩みはわかるようになってきましたし、保護者の方に向けて何かお話しできるようなコンテンツをつくりたいという思いが、年々強まってきています。

 

── 保護者に対してのサポートも必要ですよね。ほかにも今後、挑戦したいことはありますか?

 

葉一さん:東京ドームのような大きな会場で、子どもたちを集めて教育イベントをやりたいです。教育という堅苦しく思われているカテゴリーでも、これだけ子どもが集まってエネルギッシュなイベントができるんだ、というところを見せたいです。

 

もうひとつは、発展途上国の子どもたちにとっても、映像で学ぶということを当たり前にしたいです。昨年、JICAと一緒にパキスタンを視察してきて教育格差を目の当たりにして、発展途上国で学びにアクセスできない子どもたちに、映像で学ぶという選択肢を持ってほしいという思いを強くしました。もちろん時間がかかることなので、私の寿命が間に合うかというのもありますけど、今後の人生のミッションに掲げています。

取材・文/富田夏子 写真提供/葉一