教育系YouTuberの葉一(はいち)さん。13年前から配信を続けるYouTubeチャンネル『とある男が授業をしてみた』は、登録者数200万人超の人気授業コンテンツです。中学時代はいじめにあい、友達も先生も敵だと思っていた葉一さんですが、高校で親身に相談にのってくれる恩師と出会ったことで、将来教師になるという夢を抱きます。しかしその後、社会の壁にぶち当たってしまいます。
「教師なんて敵だ」と思っていたけれど…

── 中学2~3年のころいじめにあい、同級生や特定の教師に体型をからかわれたり、陰口を言われたりしていた葉一さん。高校に進学してからは環境が変わったのでしょうか?
葉一さん:中学で私の陰口を言い出したのが女子だったこともあり、高校は男子校を選んで受験しました。でも、中学で同級生や教師からいじめを受けた経験があるから、「別に高校で友達ができなくてもいいし、教師なんて敵だ」という態度で、ものすごく斜に構えてましたね。
入学してみると、1学年7クラスあったのですが、たまたま中学の同級生がひとりもいないクラスになったんです。それで人間関係がリセットされたこともあり、すぐに友達ができました。高校では本当に友達に恵まれました。
── 恩師と呼ぶ先生と出会い、教師のイメージも変わったそうですね。
葉一さん:恩師の松崎先生、実は第一印象は最悪でした(笑)。高校1年生から数学の担当教師だったのですが、最初の自己紹介で「お前らに好かれる気は1ミリもないから」と言い放っていたので、正直、ハズレの先生に当たってしまったと思いました。ただ、授業では厳しいですけど、休み時間や体育祭の行事などでは生徒と一緒にふざけ合って楽しんでくれる先生だったんです。また、数学でわからない問題があって聞きに行くと、どんなに時間がなくても必ずその場で教えてくれました。
会話の内容も裏表がないし、奥さんの話をしてくれるなど腹を割って話してくれていると感じた私は、自然と障がいがある妹のことやプライベートの話をするようになりました。
── 先生には進路について相談されていたのですか?
葉一さん:むしろ松崎先生にしか、相談していなかったです。先生と出会うまでは教師を目指すつもりはまったくなくて、漠然と音楽が好きだからコンサートの音響や照明関係の専門学校へ行こうと考えていました。でも高校2年生の終わりごろに先生が、「教師とか興味ないの?向いてると思うけどな」と言ってくれて。そこで「あれ?たしかに子ども好きだし、勉強を教えるのも好きだしな」と気がついたんです。しかも、目の前になりたい教師のモデルがいるわけですから、すんなり方向転換しました。
── ご家族にも何か相談されたのですか?
葉一さん:中学時代は両親に悩みを打ち明けることができなかったのですが、高校生になってからは何でも話すようになっていました。「専門学校へ行くのをやめて4年制の大学へ行って教員免許を取りたい」と相談した際、母親からは「うちの家計だと、国公立大学で家から通えるところしか進学できないけど、大丈夫?」と言われました。私の妹は日常生活のサポートが必要で会話できないほど障がいが重く、母はパートでしか働けませんでしたし、ひとり暮らしをさせる余裕がなかったんだと思います。
── 進学先は東京学芸大学ですよね?群馬から通っていたのですか?
葉一さん:はい、通っていました。家から大学の正門までが片道3時間弱、往復6時間かけて4年間通学しました。