強い眠気が繰り返し起こる睡眠障害「ナルコレプシー」。あこちさんに診断名がついたのは29歳のときでしたが、まだまだ周りで病気を知る人も少なく、理解を得るのに苦労したといいます。
診断が出たのは異変を感じてから15年後

── 中学生のころから、強い眠気が繰り返し起こる「ナルコレプシー」に苦しんできたというあこちさん。正式な病名にたどりつくまで15年もの孤独な闘いを経験されました。
あこちさん:診断がついたのは29歳のときです。病名は「ナルコレプシー2型」。夜に十分眠っても日中に強い眠気が襲う睡眠障害で、脱力発作を伴う1型に比べると外からはわかりにくく、怠けているように見られやすいんです。
中学時代から、理由がずっとわからないまま、抗えない眠気に振り回されてきました。「やる気がない」と叱られ、上司に相談すれば「誰だって眠い」と一蹴される。学校でも浮いてしまい、会社でも信用されず、居場所を失って仕事もなかなか続かない。「なぜ私はこんなにダメなんだろう」と自分を責め続ける15年間でした。病名がついたことで、ようやくトンネルを抜け出して前を向いて歩けるようになりました。
── 診断後、生活はどう変わったのでしょうか。
あこちさん:薬を飲むようになって、起きていられる時間が増えました。眠気をある程度コントロールできるようになり、生活の質がグッと上がったと思います。ただ、眠気が完全になくなるわけではありません。頭は動いていても体がついてこない、そんなだるさがあります。薬が強いので、週に2日の「休薬日」を設けていますが、その日はやはり強い眠気に襲われます。
たとえ眠れても、心地よい睡眠とは限りません。寝入りばなからいきなり夢を見るんです。金縛りのように動けず、夢と現実の区別がつかないこともある。「誰かが部屋に入ってきた」と思って起きても、実際には誰もいない。そんな生々しい夢が続いて、寝ても休まらない夜も多いですね。
── それだと疲れがなかなか抜けませんよね。日常生活でも、いろいろと工夫をされているのでしょうか。
あこちさん:安全のために「やらないこと」を決めています。料理では極力火は使わず、電子レンジやトースターを使う。包丁の代わりにフードプロセッサーやスライサーを使って、揚げ物や焼き魚は、父が手伝ってくれます。
お風呂も湯船には浸かりません。以前、湯船で寝てしまって、のぼせて脱水を起こしたことがあるんです。それ以来、シャワーだけにしています。