メディアが「目立つ障害」を求めることで傷つく人がいる
── 障害を持つ当事者として、今の社会にどんな思いがありますか?
Lisa13さん:電車に乗っているときや、街中を歩いているときに、私の右手を好奇の目で見る人はやっぱりいて。私は何も思わないけれど、同じような障害を持っている人のなかには、そういう視線を向けられるのが嫌なタイプもいます。
あるとき、健常のお子さんが、私の右手を見て「どうしてあんな手なの?」って親御さんに聞いている場面に遭遇したんです。なんて答えるのかなと思っていたら、その親は何も答えずに、子どもを促してスーッとどこかへ行ってしまいました。こういうとき、手や足に障害のある人はどこにでも普通にいるということが、こんなにネットが発達していても浸透していないんだなと感じます。
「手がない人も足がない人もいる、いろんな人がいるのが普通だよね」っていう感覚が世の中に浸透したら、子どもたちの間で障害を理由にからかったり、いじめたりすることもなくなっていくはず。それこそ、ファッションモデルや女優にだって、手のない人が自然にいてもいいのにって思います。

── たしかにメディアでの障害者の取り上げ方も、マイノリティということを強調するやり方が多いですよね。
Lisa13さん:私の場合、長袖を着てしまうと障害が目立たないから、健常者と障害者のはざまにいるような感覚もあるんです。以前、ファッションモデルとして障害がテーマのイベントから出演オファーをもらっていたのに、「義足のモデルのほうが目立つから、義足を全面に出すコンセプトにするね」と言われ、出演自体がキャンセルになったことがあって。
一般の人の目を向けるためにコンセプトを変えるっていうのは理解できるけど、障害が「映える」かどうかの度合いでどのモデルにするか決めるのはどうなんだろう?って。周りの障害のある友達に聞いても、そういうデリカシーに欠ける扱いをされたことが少なからずあるようです。
── 目立たない障害とまとめられてしまうと、「私の障害って軽く扱われるものなのか」って傷つく人もいますよね。多様性といわれているわりには、まだ見えない線引きや壁みたいなものを感じるということでしょうか。
Lisa13さん:そう思います。私と同じように手がない子が一般のモデルオーディションを受けたら、「手がないからダメです」って普通に言われたと聞きました。そのいっぽうで、障害がテーマだとモデルは見栄えのする障害があるほうがいいというし、どっちなの?って思います。
── 自戒を含めて、メディアの人間は気をつけないといけないところです。逆に「障害を売りにするな」みたいに言われることもありますか?
Lisa13さん:それもありますね。健常の人から見たら、私は「障害を売りにしているアーティスト」に見えるのかもしれません。でも、障害のある当事者や親御さんから見れば、それも有益な情報のひとつなんです。だから、私みたいな存在も必要だし、どんどん発信していくべきだと思っていて。そもそも売りにするってどういうこと?と思うし。アンチコメントを見ると、人が注目を浴びてるのが気に入らないがゆえにそんな言葉を投げつけてしまうのかな、何か嫌なことでもあったのかな?なんて思ってしまいます。
── 達観していますね…(笑)。義手ギタリストとしてのこれからの目標はありますか?
Lisa13さん:私の存在を知ってもらうことによって、障害があってもギターをやりたいとか、ファッションを楽しみたいという若い世代が増えるのであれば、これからも発信を続けて、その子たちを導いていきたい。そのためにはギターの練習を怠らずに、地道に今やっていることを継続して、努力を積み重ねていかないといけないなと思います。
取材・文/小新井知子 写真提供/Lisa13