「売れたい欲」がなく25年間が過ぎていった

── それは意外でした。紆余曲折の20代を経験していていらっしゃるので、てっきり「いつかは売れてやる!」という野心のようなものが、つねに胸にあったのかと思っていました。

 

小力さん:そういうの、まったくなかったんですよね。単純にお笑いが楽しいからずっと続けてきただけで、正直、目標を持っていたわけでもなくて。ただ、自分がおもしろいと思うことを夢中になってやっていただけなんです。

 

売れない20代のころも「下積み」とは思っていなくて、仲間やお客さんが喜んでくれるのがうれしくて、それが芸を披露する原動力になっていました。本当に運がよかったなと思います。気づけば、それが25年も続いているわけですからね。振り返ってみると、遠回りも迷いも全部ひっくるめて「楽しかった」のひと言に尽きます。売れるかどうかではなく、ただ好きなことを続けてきた。その積み重ねが、いまにつながっているんだと思います。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/長州小力