一家の大黒柱が亡くなり、その後に大きな借金が発覚。残された家族が途方にくれる…ドラマのような展開を現実に経験したのが、お笑い芸人・長州小力さん。財産放棄で実家も家業も手放した20代。突破口を切り開いたのはやはりお笑いでした。
父が死んで3億円以上の借金が発覚
── 22歳のころ、父親が急逝し、3億5000万円の借金が発覚。実家の青果店を手伝いながら芸人として活動していた長州小力さんにとって、生活が一変するできごとだったそうですね。当時の状況を聞かせていただけますか。
小力さん:実家は学校給食専門の青果店を営んでいました。僕はその手伝いをしながら、芸能の活動を少しずつ始めていたんです。昔は商売が順調で、裕福な暮らしをしていたこともありました。でも、うまくいっていた商売が低迷期に入り、家族で「ちょっと休もうか」と話していた矢先、父が旅先で急逝しました。以前からがんを患いながら治療を続けていたのですが、比較的元気だったので、まさか旅先で容体が急変するとは思いもしませんでした。
さらに父の死後、約3億5000万円の借金があることが判明。衝撃を受けました。商売上の借金だけでなく、他人の保証人になっていたぶんも含まれていたようです。それまでなんの危機感もなく生きていたので、「3億5000万円、これどうしよう…」と、家族で途方に暮れました。
父の死後も、少しの間、家族で青果店を続けていたのですが、全国で「O157」という食中毒が発生し、その影響で給食向けの衛生基準が厳しくなり、商売自体が難しくなってしまいました。最終的にお店を完全にたたむことになり、財産放棄の手続きを取って、土地や建物は債権者に引き取ってもらいました。家も手放すことになり、実質的に倒産という形で区切りをつけたんです。そこから生活が一変しました。

── 芸人として本格的に活動するまでは紆余曲折があったそうですね。どんな道のりだったのでしょうか?
小力さん:その後は日雇いの工事現場やデパ地下のバイトなどで生計をたてながら、お笑いの仕事を続けていたんです。とはいえ、仕事なんてほとんどない状態。友だちから「お笑いのライブやるから、出る?」と声をかけてもらったら出演する、そんな感じでした。