子どものころから母がかけ続けた言葉

── 現在は、「アルビノ・エンターテイナー」と名乗り、当事者の経験談などを精力的に発信されています。活動の背景には、どんな思いがあったのでしょう。

 

粕谷さん:ネット上で見るアルビノのエピソードは「いじめられた」「理解がなくてつらい思いをした」という苦労話が多かったんです。これでは、当事者も親御さんも悲観的になって生きづらいだろうなと感じました。でも、僕自身は、アルビノが原因でいじめられたこともないし、みんなと違う見た目にコンプレックスを抱いたこともありません。だから、「こんなふうに楽しく生きているアルビノもいるよ」「幸せになれるよ」と伝える存在がいてもいいんじゃないかと思ったんです。

 

──そうした思考はどこからきているのでしょう。

 

粕谷さん:母の存在が大きいと思います。「真っ白でかわいいね、きれいだね」と、僕の見た目を前向きにとらえ、アルビノの不便さに関しても、ネガティブな言葉を使うことはありませんでした。そのおかげで、人と違うことは才能なんだと、感じさせてくれました。学生時代、シナリオライターを目指したことがありますが、みんなが見ている世界と、アルビノとして生きてきた僕に見えている世界は違うと実感していたからです。僕なりの人と違う物語を作れるかもしれないと思ったのがきっかけでしたね。卒業後は、アルビノ・エンターテイナーとして、アルビノの僕から見える景色や思いを発信しています。

 

── 近年は、多様性への理解が広がりつつあります。見た目の違いに対する社会の受け止め方も変わってきたと感じますか?

 

粕谷さん:だいぶ変わってきたと思います。とくに今の若い人たちは、髪や肌のこともストレートに聞いてきます。アルビノについて説明をすると、「ああ、そういう人がいるんですね」とフラットに受け止めてくれて「かっこいいですね」とポジティブにとらえてくれる人も多いです。国籍や人種の違いと同じ感覚で、見た目の違いを自然に受け入れる時代になってきたのかなと感じています。僕自身は、すごく生きやすくなっていますね。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/粕谷幸司