関西を中心に活躍するタレントの藤原宏美さんは、41歳のときに乳がんが発覚。ステージ0期の非浸潤がんのため、左胸全摘を決断することに。しかし、1年後にまさかの乳がん局所再発が判明したそうです。(全2回中の2回)
「全摘するなら、お別れ会をしたほうがいいよ」

── 今から8年前、41歳のときに乳がんがわかり左胸の全摘出の手術を受けられました。手術前には胸の撮影をされたそうですね。
藤原さん:左胸全摘の決断は今までの人生でいちばん悩んだつらいことで、簡単ではなかったです。ただ、「命には替えられない」という先輩からの助言があり決断できました。
その相談したときに、先輩から「全摘するならばおっぱいお別れ会をするといいよ」と言われました。先輩は手術前に当時の彼と鏡の前にふたりで立ち、自分の胸に向かって「バイバイ」と言って、きちんとお別れしたそうなんです。それで気持ち的に区切りがついたと。なので、私も左胸を摘出する前の自分の姿を残すために、左胸の撮影をしようと思ったんです。
── 撮影はどなたにお願いしたのですか?
藤原さん:インターネットでまずは撮影してくれるカメラマンを探しました。できれば女性にお願いしたく、私の気持ちを理解してくれる人がいいと思っていたら、私と同じような境遇の女性をこれまでにも撮影している方と出会えました。ヘアメイクなども同じ写真館の方にお願いすることができました。
── 撮影はどのような雰囲気だったのでしょう?
藤原さん:実は撮影にはテレビの密着取材も入ったんです。というのも、私は乳がん0期だとわかったときに、自分と同じ境遇だった人のことを参考のために知りたかったのですが、0期で闘病した人の話がほとんど見つからず…。本当はがんを公表するつもりはなかったのですが、情報も少ないし、自分と同じ境遇の方が今後困らないためにも0期でも全摘しなければいけない事実があることを知ってもらいたいと、いろいろなメディアに連絡をしたんです。
そのなかで、あるテレビ局に取材してもらえることになり、そのときに左胸の撮影のことを話すと「ぜひ密着取材をさせてほしい」と。私としてはインタビュー程度のつもりで、まさか密着ほど大ごとになるとは思っていなかったのですが、お受けすることに。撮影にはカメラクルーもいたため、すっかり仕事モードでの撮影になりました。
── ご自分のなかで「おっぱいお別れ会」はできましたか?
藤原さん:そうですね。手術前に自分の気持ちに区切りがつけられたと思います。撮影では花びらで体を一部隠したのですが、カメラマンさんが「造花より生花の質感がいい」とアドバイスをくれたので、元気なバラを探して触れているうちに楽しくなり、すっかり本来の目的を忘れていました。
ただ、メイクをされながら話しているうちに、自分のこれからの姿を想像して、つい涙があふれてきてしまいました。 メイクが崩れるので「ごめんなさい」と謝ったときに、メイクさんが「出て仕方ない涙ですよ…」と言いながら目元をぬぐってくれた優しさは忘れられません。 ずっと笑顔をキープしてきて、区切りをつける決心で撮影に挑むつもりが、このときに自分の複雑な心境に気づきました。
できあがった写真を見て、きれいに撮っていただけ「きれいだな、よかった」と思いました。そこからは迷いなく、先生にお任せしよう、という気持ちに。手術当日の朝は鏡の前で、これから手術するくっきりマーカーのラインが入っている左胸に「バイバイ。ありがとう」と声をかけました。
後日放送された密着取材の反響も大きく、いろいろな方から連絡をいただきました。私が知らないだけで、実はがんを経験していた知り合いなどもいて驚きましたね。