「自分が幸せであること」で誰かに希望を与えたい

たいぞう
「自閉症の特性と向き合えたことで、自分に自信が持てるようになった」

── たいぞうさんは、島田紳助さんからの助言で絵を描き始め、2007年に初めての個展を大阪で開催しました。その後も、アーティストとしての活動を活発に続けていますが、自閉スペクトラム症(ASD)であることを公表して以降、たいぞうさんが描く絵にも、変化があったそうですね。

 

たいぞうさん:そうですね。自分に自閉スペクトラム症(ASD)があることがわかり、「周りから助けてもらっていたこと」にも気づけたことで、描く絵に変化が生まれました。光の当たる表舞台ではなく、「舞台裏」を表現したいと考えるようになったんです。絵のタッチが大きく変わったわけではないのですが、主役に「支えている存在」を描きたいと思うようになったことで、絵のモチーフやテーマが変わってきたように感じています。同時に「色がやさしくなった」という感想をもらうようになりました。

 

── 現在は、自身の特性とどのように向き合っていますか?

 

たいぞうさん:自分の特性が明らかになったことで、心地いいと思える生活スタイルが築けるようになりました。たとえば、1日のスケジュールについても、ルーチンを作ると満足感を得られるため、毎日同じ時間に同じ行動をするようにしています。倉庫に出勤するときも、必ず1時間前には職場に着くようにしていて、食堂や控室で、手帳に「今の気持ち」を綴るんです。ページの隅々まで文字で埋まるとテンションが上がり、心地いい気持ちで仕事に移ることができています。

 

今まで、うまくいかないことが数多くありました。でも自閉スペクトラム症(ASD)の自分を受け入れて、特性と向き合えたことで、仕事も生活も、いろんなことがうまくいくようになったと感じています。いいサイクルができると、次につながるパワーも湧いてきます。それを繰り返すことで、自分に自信が持てるようになりました。

 

これまでも、物流倉庫で働きながら、芸人とアーティストとしての活動を並走させてきましたが、今では、芸人よりもアーティストとしての仕事が増えてきました。絵を描くときに意識しているのは、「自分が幸せであること」。それは、僕の絵を見てくれる人に「幸せな気持ちを届けたい」と考えているからです。これまでの僕の人生を作品に込めて、応援してくれる人、見守ってくれている人に届けられるよう、誰かの希望になれるよう、これからも僕の生きざまを表現していきたいと思います。

 

取材・文/佐藤有香 写真提供/たいぞう