「お笑い芸人」と「アーティスト」の二足のわらじで活躍するたいぞうさんは、2024年に、発達障害のひとつである「自閉スペクトラム症(ASD)」であることが判明しました。49歳のときのある出来事から「発達検査を受けよう」と思い至ったと話します。(全3回中の2回)

「芸歴30年なのに」突然、頭が真っ白になった

たいぞう
芸人活動が中心だったころのたいぞうさん

── たいぞうさんは49歳のときに、「自閉スペクトラム症」という診断を受けました。発達検査を受けようと思ったきっかけは何だったのですか?

 

たいぞうさん:仕事中に感じた違和感が、発達検査を受けるきっかけになりました。2023年ごろ、吉本興業の芸人で「本を出す」という企画がありました。何度か打ち合わせをして、僕の企画が最終プレゼン大会に残ったのですが、出版社の人たちの前で発表をしたとき突然、頭が真っ白になってしまって…。何を伝えればいいのかわからなくなってしまい「僕は本なんて読んだことないのに、出していいんですかね」と話し、自分の企画の内容も説明できずに早々に終わりにしてしまったんです。

 

特に緊張していたわけではなかったのですが、突然そうなってしまいました。芸歴30年以上あって、しゃべることが仕事といってもいいはずなのに、大事なシーンでそれができなかった…。「なんか変だな」と思いました。

 

そのことを妻にも話したら「調べてみようよ」と言ってくれて。インターネットで調べるうちに、WEB上で受けられる「神経発達症診断」に行き当たったんです。試しにやってみたところ、ほとんどの項目に該当。その後、きちんと病院で検査を受けて「自閉スペクトラム症(ASD)」であることがわかりました。本のプレゼン時に頭が真っ白になってしまったのも、強いプレッシャーや複数の情報処理が苦手な自閉スペクトラム症(ASD)に起こり得る、パニックのひとつだったのかもしれません。

 

── 診断結果を聞いて、どのような気持ちだったか教えてください。

 

たいぞうさん:なんとなく予想はしていたからか、驚きはしなかったです。「ああ、やっぱりな」っていう、納得した気持ちでした。

 

妻も穏やかに受け止めていた様子で、「向き合っていこう」と言ってくれました。後から聞いた話ですが、妻は以前から僕に対して「何かあるだろうな」と感じていたようです。というのも、妻が実家で暮らしていたころ、両親以外に知的障害のある親戚の方と同居していたそうです。僕は検査で「知的障害のグレーゾーン」とも言われていたので、結婚して一緒に生活するなかで、なんとなく「障害」について感じるものがあったのかもしれません。