大物芸人のひと言で才能が花開いた

── 現在はアーティストとしての活動もされていますが、学生時代から絵は描いていたのですか? 

 

たいぞうさん:はい。子どものころから絵を描くのが大好きで、時間を忘れて没頭していました。でも仕事として絵を描くようになったのは、20代後半ごろです。当時出演していた番組で、絵を描かせてもらえるようになったことから、「芸人×アーティスト」として個性を演出したいと思うように。そのことを、先輩の島田紳助さんに相談したところ、「それなら、絵を200枚描いて個展を開いたらいい。それを完売させたら話題になるだろう」とアドバイスしてくれて。

 

その言葉に背中を押されて、芸人活動とアルバイトの合間に絵を描き溜めるようになり、2年間で200枚の絵を描きあげることができたんです。

 

── 2年で200枚描き上げるために、1週間に2、3枚のペースで仕上げていったということですね。

 

たいぞうさん:そうですね。自分でも驚くほど集中して絵を描き溜めていきました。おそらく自閉スペクトラム症(ASD)の特性で、ひとつのことに対して極度な集中状態となる 「過集中」の状態だったんだと思います。

 

無事に200枚達成した後、紳助さんに報告に行ったら「そんなこと言ったっけ?」って忘れられていたんですけどね(笑)。でもその後、個展について紳助さんの番組でも告知してもらえたおかげで、絵はすべて完売。このときの個展が話題となり、テレビ番組のレギュラー出演が決まったり、定期的に個展を開催できるようになったんです。

 

今振り返ってみると、特性が原因で失敗したことや苦労したこともたくさんありましたが、芸人になることを親に認めてもらえたのも、アーティストとしての活動を軌道に乗せられたのも、こだわりの強さや集中力など、特性がいい方向に活かせられたからだったんだなと感じています。診断を受けたことで、自分の自閉スペクトラム症(ASD)と向き合えるようになったので、今後もいい方向に特性を活かしていけたらと思っています。

 

 

「芸人とアーティスト」の二足のわらじで活動を展開するたいぞうさん。多忙な日々を支えてくれるパートナーとは「結婚当初から意見がぶつかることが多かった」と話します。2024年に判明した発達検査を受けることをあと押ししたのも、パートナーの存在があったからこそ。今では、お互いに特性を理解し合い、円満な結婚生活を送れているそうです。


取材・文/佐藤有香 写真提供/たいぞう