発達障害の人との出会いで特性を客観視できるように

── メルトダウンが起こる前、「発達障害の特性と向き合えている」と感じていたそうですが、何かきっかけがあったのでしょうか。

 

沖田さん:大人になってから、SNSのコミュニティを介して同じ発達障害の人と対面したことが、特性を自覚するきっかけになりました。

 

それまでの私は、発達障害の診断を受けていても、「認めたくない」という気持ちを強く持っていました。というのも、私の5歳下の弟も同じ発達障害で、私よりも特性が強い傾向があって。弟は、小学生時代にひどいいじめに遭っていて、高学年になるころには不登校になっていました。当時、私も弟も「発達障害」という診断を受けていたのですが、「私は学校がつらくても通い続けたのに…」と、弟が不登校になった理由が理解できずに、いつも腹立たしい気持ちを抱えていたんです。

 

その後も、弟は引きこもり状態。そんな弟を見るたびに、「私は弟とは違う。私が弟と同じ発達障害だとは思えない」という気持ちになり、自分の特性ときちんと向き合うことができずにいました。

 

でも、発達障害に興味はあったので、20代のころに発達障害コミュニティのオフ会に行ってみることにしたんです。池袋のカラオケボックスにみんなで集合したのですが、部屋に入ったたん、それぞれの「こだわり行動」が表出。「僕はこの席に座らないと落ち着かない」「選曲の順番は絶対守りたい」など、各々のこだわりとルーティンにのっとって過ごしていて、グループで行ったのに誰も仲よくしようとはせず、まるで「1人カラオケ」をしに行ったかのような状態。

 

その様子を見たとき、私のなかで「ああ、これが発達障害なんだ。自分もこんなふうに周りから見られていたんだな」と客観視することができたんです。

 

── 自分にとっては当たり前の行動でも、周りから見たら不自然に映ることがあると感じたのですね。発達障害の特性を客観視できたことで、ご自身の行動に変化はありましたか?

 

沖田さん:自分のこだわりや、苦手を自覚しようと考えるようになったことで、「快適に過ごす方法」や「周りに迷惑をかけない方法」を選べるようになりました。

 

たとえば、発達障害の人は、音や光などの外部からの刺激に敏感になってしまうことがあります。私も聴覚が過敏で、特に子どもや女性の高い声が苦手なので、ファミレスなどに行くと強いストレスを受けることも多くありました。

 

苦手を自覚する前の私は、「私は子どもが苦手」だと考えていたので、子どもに対して「こっちに来ないで」というオーラを出して怖がらせてしまったこともありました。でも、「子どもの高い声が苦手なんだ」と理解できてからは、子どもが多い場所では、ノイズキャンセリング機能がついたデジタルイヤフォンを装着して、快適に過ごすことができるようになったんです。

 

発達障害では、「性格の一部」だと感じてきたことが、実は「特性からくるもの」というパターンも少なくありません。夫や友人から指摘されて、気づかされることもありますが、最近では、一つひとつの特性を理解しながら、向き合うことができるようになってきたと感じています。