特性を理解してもらえたことで結婚生活が円満に

── パートナーと結婚されたのが26歳のころだと伺っています。人とのコミュニケーションが苦手な沖田さんですが、結婚生活において壁にぶつかったことはありましたか?
沖田さん:結婚して10年目くらいまでは、ケンカばかりしていて、私自身「すぐ離婚してしまうのでは…」と考えていたほどでした。特に私は、片づけが大の苦手。集中が持続しにくいADHD(注意欠陥多動性障害)の特性からか、どこから片づけていいのかわからなかったり、片づけを始めても、すぐにほかのことに気がそれてしまうため、ひと部屋がいっこうにきれいにならないんです。今飼っている犬が子犬だったころも、夫から「犬が誤食してしまうから、部屋を片づけてくれ」と怒られては、「私は片づけができないんだよ」とケンカになっていました。
でも、夫は私の特性を少しずつ理解してくれたようで、「怠けていて片づけないのではなく、根本的に無理なんだな」と考えてくれるようになりました。今では、お互いの距離感をうまくとれるようになり、穏やかに生活できています。
── お互いが心地よく生活するためには、発達障害の特性を家族みんなで理解することが必要なのですね。
沖田さん:夫の場合は、「理解する」というより「諦めている」に近いかもしれませんが…(笑)。それでも今は、家事の多くを夫が担当してくれているので助かっています。私は、ゴミ出しと洗濯物を干す係。部屋もそれぞれに個室を設けました。リビングを散らかしてしまうと、夫から注意されますが、私の部屋が散らかっていることには干渉してこないので、「片づけ」でぶつかることはなくなってきました。
── 昔と今とでは、特性があることで感じるつらさや大変さは、軽減したと感じていますか?
沖田さん:そうですね。これまでの私の人生は、疑問や葛藤が多く存在し、楽しいだけの日常ではありませんでした。普通に生活しているだけなのに、人から避けられたり、怒られたり…。特に発達障害の特性が目立ち始めた小学生時代は、「なぜだろう?」と見えない出口を探し続けるような感覚でした。それでも、今こうして過去に体験した出来事や思いを、体験談として漫画で表現することができているので、今につながっているんだなと考えることができています。
また、10代、20代のころは、こだわりが強かったせいか、毎日イライラして過ごしていました。当時の日記にも「怒り」の感情ばかりが綴られていて…。でも、今では特性に対してうまく対応できているからか、以前のような怒りの感情は起きにくくなりましたし、予期せぬ事態が起こってもパニックにはならなくなってきました。
発達障害の特性や度合いは、年齢や環境で変化することもあるようなので、今後も自分と向き合いながら歩んでいきたいと考えています。
取材・文/佐藤有香 写真提供/沖田×華