大学生にしてバスケットボールの特別指定選手としてプロ入りし、現在はBリーグ・佐賀バルーナーズに所属、粘り強いディフェンスを持ち味に活躍する内尾聡理さん。ひとり親家庭で育った経験から、バスケ選手と両立して子ども支援プロジェクトを立ち上げ、思いを込めて活動しています。「子どもたちとは一緒にバスケをすると、自然と距離が縮まるようです」と笑顔で話してくれました。
いろいろな境遇の子どもたちに夢を持つきっかけを
── 内尾さんは、プロ1年目の2024年11月、社会貢献活動として、子ども支援プロジェクト「S.U future」を立ち上げ、今年10月にはBリーグ・佐賀バルーナーズ公式の共創型社会貢献プログラム「SAGA Take Action」のキャプテンに就任されました。子どもたちのための活動を始められたきっかけを教えていただけますか?
内尾さん:幼少期からひとり親家庭で育ったこともあって、昔の僕のような子どもたちが、何か夢を持つきっかけを見つけられる場をつくりたいと、ずっと思っていました。
僕は、小学1年生の終わりころから姉の影響で始めたバスケットボールに夢中になり、その道をまっすぐに続けてきて、大学時代にプロバスケ選手になることができました。そんな自分だからこそ、子どもたちに少しでもいい影響を与えられたらと思っています。プロ選手として「何かしたい」という想いをずっと持っていたので、こうして自分の活動を立ち上げることができて、本当にうれしく思っています。

──「S.U future」の活動では、まずは生まれ故郷・九州の「子ども第三の居場所」(※)などを訪れ、子どもたちと触れ合う時間をつくることを大切にされているそうですね。
(※)日本財団が支援している「子どもたちが将来の自立に向けて生き抜く力を育むための居場所」として運営されている施設。
内尾さん:僕の言葉や行動で、子どもたちが少しでもポジティブな気持ちになってくれたらいいなと思いながら、子どもたちと過ごしています。ただ、僕がプロのバスケットボール選手だからといって、みんなにバスケを始めてほしいというわけではないんです。僕を通してバスケに興味を持ってくれたり、それ以外のことでも「やってみたい」と思う気持ちを見つけてくれたり、そんなきっかけになれたらと思っています。子どもたちがごく自然に「明日から何かやってみようかな」と感じてくれることが、いちばんうれしいです。
── 初めて児童養護施設を訪れたのは、プロ選手になった大学4年のころだとうかがっています。
内尾さん:当時の所属チームで行っていた社会貢献活動をきっかけに、初めて児童養護施設に行かせてもらいました。あのときはとても温かな雰囲気で、子どもたちは僕が想像していたより楽しそうに仲よく活動していた様子を覚えています。
「S.U future」を立ち上げてからも、いろいろな境遇の子どもたちと関わっていますが、ボールを使って一緒に体を動かすと、距離がグッと縮まるのを感じるんです。僕は今24歳で、「子ども第三の居場所」には18歳くらいまで通う子が多いので、自分と年齢が大きく離れていないのも理由かもしれません。すぐに打ち解けて、仲よくなるのも早かった気がします。そういう意味でも、話すだけでなく、体を動かしながらお互いを知っていくことの大切さを実感しています。お互いの見えない壁も、少しずつなくなっていくのかなと思います。

── 先日は、佐賀県の「子ども第三の居場所」に指定されている児童養護施設を訪れて、鬼ごっこをされたそうですね。
内尾さん:はい、バスケットボールを使って鬼ごっこをしました。Bリーグのシーズン中ということもあって限られた時間でしたが、一緒に遊んで、子どもたちがシュートを打ったあとに、僕もシュートを披露したりして。リングが少し高い位置にあったので、子どもたちには難しかったと思うのですが、みんなとても上手でした。僕は、みんながシュートを決めたときの達成感を味わってくれたらうれしいなと思いながら過ごしていました。
毎回、児童養護施設や「子ども第三の居場所」に行かせてもらうたびに感じるのは、僕が行くことで子どもたちが笑顔になってくれたり、一緒に体を動かす時間を楽しんでくれたりすることへのうれしさです。日ごろ、あまり体を動かす機会が少ない子たちが楽しそうにしている姿を見ると、僕も元気をもらえて、「また頑張ろう」と思えます。